ときどき頭に浮かぶ曲の歌詞のこと

神聖かまってちゃん『友だちを殺してまで』がリリースされたのは2010年。ぼくはCDショップでバイトをしていて、試聴器に並んでいるジャケットの様子をまだ覚えている。調べればもっとはっきりわかるけど、2009年くらい(もっと前?)からボーカルのの子はニコ生配信を頻繁にやっていて、新宿の喫茶店のテラス席で配信したり、渋谷のセンター街で配信して大暴れしたりとある界隈ではもう有名な人物だった。今も配信をやっているからネット配信は日常生活のツールなのだと思う。

『友だちを殺してまで』のリードトラックは「ロックンロールは鳴り止まないっ」で、その衝撃たるや、という感じだが、全曲いい。すごくいい。の子の線の細い、割れやすい声質と、ぼっちや疎外感を覚えている人に刺さる歌詞、題材への視線など、どれもが切っ先が鋭いのに、語られていることはとてもニッチなのに、包容力がある。

「ぺんてる」はイントロでほんの少しだけ「戦場のメリークリスマス」みたいなフレーズが入るところもDNAに語りかけるようだし、歌詞がすばらしい。

あーもう人生が完全に狂っちゃっている
ぺんてるに ぺんてるに 助けてくださいなんて言えればさぁ
ぺんてるに ぺんてるに 助けてください いつものくださいな

神聖かまってちゃん「ぺんてる」作詞:の子

全編歌詞の流れよ、後半の展開よ、となる。

「死にたい季節」はボーカルエフェクトがまず印象に残るよなあ。最近では「僕の戦争」とかもだが、もう一曲、名曲がある。けど、タイトルがつよつよなためここでは言及するの控えとこう。このエフェクトに彼岸感があり、不気味であると同時にキッチュでもあって、何よそのバランス感覚ってなる。

「23才の夏休み」はアップテンポな曲だけど、それは走っているというより焦っているがための速度だと聞いているとわかってくる。時が過ぎていくのに取り残されていく感覚が。7年後に「33才の夏休み」を発表してる。聞いてるこちらも歳を取っているのでグッと来る。

「学校に行きたくない」は痛いよ……。ほんと。計算ドリル返してほしい。高校生の頃の悲しみが疼く!「ゆーれいみマン」はkeyのMONOのフレーズがやたら美メロだ。シンプルでキャッチー。歌詞で語られているものは残酷なんだけど。なんだけど、歌に歌われることで救われることもあるなと思う。

急に何でかまってちゃんのアルバム全曲解説じみたことをしてるかというと、「ちりとり」を思い出していたからで。

多分僕はちょっと 多分僕はちょっと 多分 多分
バカなんです

神聖かまってちゃん「ちりとり」作詞:の子

すごい曲で、歌詞もすんごいのだけど、何よりここのフレーズが本当にすばらしい。この歌詞を書いてくれてありがとう。この歌を作ってくれてありがとう。

破壊的なパフォーマンスが、NIRVANAのカート・コバーンのようで、とても危なっかしいけど、今もずっと曲を作り続けている。ステージでMONOと殴り合いの喧嘩をしたり、頭ぶつけて血出したり、は心配だけど、折々でぶっ刺さしてくる曲を作る。


いただいたサポートは、活動のために反映させていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ほそかわようへい/演劇カンパニー ほろびて 主宰/劇作、演出/俳優/アニメライター