6月17日

 玄関を出た、階段の踊り場に、からすがいた。数日前の話だ。
 ぼくの住居は古いマンションの3階にある。外出するには階段を使って降りていくしかないのだけど、その踊り場のどまんなかに黒い、そこそこの大きさのからすがいた。えっえっ、みたいな反応をぼくもからすもした。飛び立つのかなと思ったけど翼を広げる気配がまったくなくて、逆にぼくが「ごめんね〜、通りますね〜」といいながら、そろそろと忍び足で通り過ぎた。
 駅までの道を歩いているとき、心がはねている自分に気づいた。正面とはいえ公園で見ていたからすだ。そのからすが我が家の、しかも触れる距離まで近づいてきてくれた。別世界の有名人がふいに、ぼくのプライベート空間に現れたような感じがした。「まじ!? 目の前にいるやん!」

 日が暮れて帰宅する。マンションの階段を登りながら、「さすがにもういないよな〜」と考える。3階につく。からすがいた場所に、フ◯が置いてある。2、3個だ。微笑を浮かべながらわが住居のドアの前を見る。とりわけおおきなフ◯が置いてある。来たんだね、ここに。はっきりとそう示している。何かを求めていたのかな。それにしても、しっかりと、ね。迷ったが梅雨が洗い流すだろう。見なかったふりをして部屋に入った。

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