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火~木曜日連載『一日一妖!』 2月23日【オシラ様】

 初めましての方、ようこそいらっしゃいました。
 二度目以上お運びの方、本日もありがとうございます。
 こんにちは、あらたまです。

『一日一妖!』とは――
 怪異や怪談が大好きな私あらたまが、妖怪や怪異に関連する与太話をさせていただくという連載企画です。
 毎日読むのにちょうどいい、約1000字の超ショート・ショートテキストサイズ!
 さっくり楽チン軽やかな、ゾワッと怪しいひとときを楽しんでいただけたら嬉しいです。

 本日は天皇誕生日、祝日です。先週末から四連休を楽しまれた方もいらっしゃることと思います。
 私は昨日今日と平常通りに作業をしていますが、カレンダー通りに休日を満喫している家族と猫につられて、少々のんびり気味な心持ちで居りました。
 にゃんこ先生が足元に丸くなってゴロゴロ言い出すと、特に緊張感がなくてですね!集中力が途切れるのは基より、眠気を誘われてですね……猫には逆らえませんよ、ぐぬぬ。

 それでは、前置きはこのくらいに。
 本日の『一日一妖!』始めましょう。

【オシラ様】

 オシラ仏、オシンメ様、オコナイ様、カバカワ様などとも呼ばれる。主に東北地方に見られる信仰で、家の守護神、養蚕の神、農業の神として屋内に祀られる。御神体は馬と人間の顔をかたどった二本の棒状のものが多い。

 民間信仰の中でも、ユニークさと不可思議さと、ある種の近寄りがたさが渾然一体となっていて、独自の世界観をもって今なお信仰を集める――私の中で、オシラ様はそんなイメージでもって存在していらっしゃいます。
 下衆な言い方をしますと。
 世界的に見ても、現代にまで生き続けることに成功している希有な土着神様ランキングがあったなら、その希有さでもってかなり上位の方に食い込んでると思ってますよ、うん。

 柳田國男先生の『遠野物語』で、その成立に纏わる物悲しい少女と馬の物語が語られているのを読んだことがある方は多いと思います。
 主な紹介として、異類婚姻譚であるとされるオシラサマの物語。
 もっと自由に個性的な仮説を立てる向きからは、当時の政治的・風土的事情の暗喩を散りばめた暗号状の物語と見られることもあるようです。
 確かに、じっくり読むと「読む人によって様々に意見は分かれる(現代は研究者の仮説も多種多様だ!)だろうなあ」と思わせる、奥行きあるお話なんですよね。
 私はどちらかというと、風土的な要素を交えた悲恋物語……今はもう滅んでしまったかもしれない、現世人類の繁栄の影に隠れてしまったなにがしかの種族と現世人類の祖先の交流を描いた話、なんて線を想像して一人切なくなってしまうのですが。

 異論反論、喧々諤々。
 とにかく、様々な説を唱えたくなってしまう成立の仕方が原因なのかなんなのか?
 某怪談師にしてオカルトハンターの方もオシラ様を調査しテレビで紹介していてらっしゃいましたが、オシラ様は扱い方を間違えるとかなりデカめの罰を当てると言われています(神様だからってのもあるけど、罰の発動条件が大雑把に言えば『失礼な事をすると』って場合なので、祟りとか霊障みたいなワードはあんまり使いたくないんです……)。

 そういう情報を先に入れてしまうと、オシラサマ=歴史の長いカルト?と早合点しそうになる方もいらっしゃいましょうが、実際にお祀りしている様子を見ると、なんだか素朴なお雛様みたいで頬が緩んでしまうくらい和やか(え、私だけかしら?)。


 おもてなしすること、お慰めすること、その両方が信仰と有機的に結びついていて、人々の心を惹きつけて止まない感じが、私には民間信仰の最も原初の姿として映るというか、支配ではなく共存する怪異の優しさみたいなものに触れるような温かさを覚えるのです。

 日本は無神論者が多いというけれど、私はその意見には懐疑的です。無神論者の『声が大きい』というのは肌で感じますけども、ね。
 真面目過ぎて、自分自身を苦しめることに美徳を見出すような教えに苦しんでいる人々は今も昔も大勢います。
 何らかの救いを求める人々が常にいるからこそ、念仏仏教が流行ったりしたんだと思うし、コロッと偽物教祖モドキに騙されて無一文になっちゃったりする人も後を絶たないのだと思います。
 蛇足ですけど。
 科学万能説を唱える方も、意識的にせよ無意識的にせよ、私の中では科学という神を盲信する、距離を置きたいタイプの宗教者です。科学はまだまだこの世界の宇宙の謎を解き明かしているとは言い難く、そのうえで日々トライ&エラーで仮説を立て謙虚に証明をしていくからこそ科学文明は発展していくのであります。

 話が逸れてしまいました。
 とにかく、無神論者が多いと言われる割には、最近はネタものも含めて神だ何だと持ち上げられる人やモノゴトが溢れているなあと思うのです。サイヤ人のバーゲンセールか!と呆れたベジータの驚愕も斯くやという、神のバーゲンセールです。
 けれどこのスーパー消費社会では、そんなニューカマー神たちはあっという間に飽きられ忘れ去られて、十年もしないうちに「なつかしー」とか言われちゃったりするんですよ。
 神様だって、生き残るのに厳しい世の中なのです。
 オシラ様みたいに、粗末に扱われたら怒っていいんだよ……そう思うんです、そう声をかけたいんです、個人的には。
 だけどそういうニューカマー神たちは罰を当てるどころかアリガトウと呟いて静かに去って行ったりするのですよ。優しい。余りにも優しすぎる。
 優しすぎて、それを愛だと呼ぶのが躊躇われるほどに。
 嗚呼、なんて世知辛いんだろうなあ、この時代は。

 了


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 それでは。
 最後までお読みいただいて、感謝感激アメアラレ♪
 また明日ね、バイバイ~(ΦωΦ)ノシシ

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