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火~木曜日連載『一日一妖!』 2月17日【天狗隠し】

 初めましての方、ようこそいらっしゃいました。
 二度目以上お運びの方、本日もありがとうございます。
 こんにちは、あらたまです。

『一日一妖!』とは――
 怪異や怪談が大好きな私あらたまが、妖怪や怪異に関連する与太話をさせていただくという連載企画です。
 毎日読むのにちょうどいい、約1000字の超ショート・ショートテキストサイズ!
 さっくり楽チン軽やかな、ゾワッと怪しいひとときを楽しんでいただけたら嬉しいです。

 出版記念お休み三日目。
 ちょっとオモシロ可愛い本をお迎えしました。

 書物占い(ビブリオマンシ―)のための本なのですが、全頁に渡って可愛い可愛いアデリー……Suicaペンギンが仲間の動物たちと共に描かれておりまして。坂崎千春さん大好きな私には堪らん一冊となっております。
 家族もたまにパラっとめくってほっこりしてるみたいですよ。

 それでは、前置きはこのくらいに。
 本日の『一日一妖!』始めましょう。

【天狗隠し】

 各地でいう怪異。
 神隠しの類で、天狗が若者や子供を攫っていき、しばらくしてから戻ってきて、天狗様に各地を案内してもらったなどという。

 私は自他共に「ちょっと怖くなるかも」と言わしめる方向音痴の天才にして、迷子の名人であります。
 これね、私、まあまあ歳を取るまでは自覚が無かったんです。人に指摘されて(特に付き合い始めたばかりの夫、ね)思い当たるエピソードが多いなあってようやく気がついたの。

 一番わかりやすいのは――
 私を揶揄おうとしたお友達が「さて問題。渋谷駅はどっちかな?」と憎たらしい顔で聞いてきたので「流石にそれは失礼じゃない?こんなわかりやすい大通りで聞くもんじゃないわ、この信号渡って右に曲がって、ひたすら高速道路と反対側に歩いて行きゃあ着くわよ」と指差して教えてやりました。
 何度も通った道だし、渋谷はその頃のメイン遊び場。いわば『庭』のようなところで迷子になるはずがないのです。
 「……ねえ、あんた。それ本気で言ってるの」
 「だから。それ以上失礼なこというと、いい加減キレるわよ」
 「ねえ……うしろ」
 「なによ!」
 「うしろ!みて!」
 振り向いた目の前には『JR渋谷駅』の大きな看板が煌々と……。
――という、エピソード。
 そのときのお友達は「マジで戦慄した」といって、私を揶揄うことは二度とありませんでした。

 グーグルマップの音声案内の通り(だと、私は自信いっぱいに)歩いてるのにいっこうに目的地に着かず、ちょっと疲れて一休みしたくなったころ偶々見つけた交番で道を尋ねる、というお話はつい最近の事。
 私にスマホを見せられながら話を聞いていたお巡りさんの笑顔が、だんだんと引き攣っていったのは軽い衝撃でしたねえ。
 「お姐さん、どっから来たって?……ほんとかい?ほんとにココ(画面を指差して)から、コッチ方面に歩いたってか。あのね、この交番は――あった、これね。よく見て。まったくの正反対だよ」
 御礼を言って交番を出た頃には、お巡りさんが薄気味悪い目に遭ったって表情を隠さなくなってましたねえ。その節はドウモスミマセン。

 自律的に歩いて迷子になるだけではないんです
 ジッとしていても、いつの間にか迷子になる(と、一度でも同行した人が言う)。だから一緒に行動するときは気が抜けない、と。
 同行者曰く「うそ!今の今までここに居たのに!」というほんの一瞬の隙で迷子になっているのだそうです。
 私はその人の斜め後ろにボサーっと立っていて「何を『居ない居ない』騒いでるんだろう」と眺めているので、迷子になってる自覚は全くないです。
 側にいる私を探す様子は、子供の頃は大変面白いものでしたが、そのまま眺めていると本当に迷子になってしまい後々めんどうなので、オバチャンになった今ではなるべく早く「ここ、ここ!ここでーす」とかなり大袈裟に手を振ったり飛び跳ねたりするようにしています。

 迷子中の記憶が無いとか、二~三日ほど行方不明になってしまうとか、そういうわかりやすい証左があれば、すわ現代の天狗隠しとなるかもしれませんが、現実はそうそうファンタジックには事が進みません。
 大抵のケースで、迷子になった私の方が「ちゃんと付いてこないとダメでしょ!」と怒られてしまいます。メンドクセー。

 平均身長を満たした人々のニュートラルな視線の高さにまで背丈が達しておらず、剰え存在感が薄い。そこに極度の方向音痴が乗算されている――それが私という人間であります。
 このめんどくさい生物学的特徴のお陰で、注意して見ていないと、あっという間にスコトーマに入り込んじゃう。これが私の天狗隠しモドキの種明かしだと思います。
 前述のお友達のように、最初のうちは私のチビッぷりを揶揄っていても実際に居なくなったような錯覚にとらわれると途端に慌てる人は、その後、私の事を薄気味わるがって近寄らなくなる(大多数)か或いは過剰なまでに面倒を見てくれるようになる(ほんの一握り)んで……ね、だから、ニッチな層にしか需要が無い珍獣系だって言われちゃうんです私。

 了


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