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極上のお伽噺。

ミミズクと夜の王

ふと本棚を眺めて、手に取って、ああやっぱこの本って素敵だよなぁと思ったので今さらながら感想を書いてみようかと。

「夜の王」と呼ばれる魔物の王様と、その王様が治めている森に迷いこんだ1人の少女のお話。
少女の額には332という焼き印、手には外れない枷。
少女は自らをミミズクと名乗り、自分をどうか食べてくれと夜の王に願うーー。

この本を初めて知ったのは高校生の頃。
大好きだった漫画「となりの801ちゃん」がきっかけ。
主人公である腐女子の801ちゃんが絶賛していて、興味をそそられて、検索。
(801ちゃんも無論オススメ。オタクだったら絶対楽しめる漫画。当時これを読んでて腐女子と付き合いたいとか言ってたらめちゃくちゃ引かれました。)

絵本チックな表紙とタイトル、そして作者名が紅玉いづきと素敵な名前だったので即書店にダッシュ。
残念ながら売っておらず…。

当時はAmazonなんて父親しかアカウントを持っていなかったし、なんか頼みごとをするのもあれだなーっと思って断念。

やっと出会えたのは大学1年生の頃。
古本屋で見つけて恐る恐る手を伸ばし、
パラパラっとページをめくって案の定神作の予感がしたので購入。

帰宅して一気読み。

読了後の余韻が尋常じゃなかった。
今まで読んだ物語の中で、
1番あったかくて優しくて読んでいて心地よい物語でした。
後にも先にも、布教用、自分用、何かあった時のため用で3冊買った本はこの本だけ。

文体も柔らかくてじんわりと心の中に入ってくるような美しさ。
この物語の1番好きなところ。
それは、紅玉いづき先生の優しくて素敵な文章もさることながら、登場人物の誰も彼もが優しいところ。
誰かが誰かを大切に思っているからこそ、紡がれていく物語。


魔物に囚われていた子供を助ける騎士。
助けられた子供を我が子のように慈しむ姫。
手足の動かない息子を案じる王様。
初めて出来た友達のために自らの自由を捨てる王子。
人間の世界で幸せに生きていけるようにと記憶を消す魔物。
そして…。

誰もが誰かの幸せを願う。
でもそれは誰かの不幸になるかもしれない。
よかれとも思ってやったことでも、その人にとっての幸せではないかもしれない。

この物語で1番好きな場面。
ミミズクがことの真相を知り、
自分の気持ちを自覚する場面。
自分はずっと優しくされていた、
ずっと大切にされていたと気付き、
自らの願いに気付く。

死にたがりだった少女が、
温かさを知り、幸せを知り、優しさを知って、
それでもなお、最後に望んだもの。

読むとじんわり心が暖まる。
世界は綺麗かも知れないと思える。
そんなお伽噺。

続編の「毒吐姫と星の石」ももちろん、最高。
Kindleだったら前日譚も読めちゃう。
ついについにコミカライズもスタート。
(この機会にまた物語が動き出さないかなと願ったり。)

秋の夜長に一気読みして、
穏やかな気分で明日に向かうためにも、
極上のお伽噺だと思います。

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