【創作小説】猫に飼われたヒト 第47回 アッシャー事件〜誘拐〜
とある冬の寒い明け方。レックス宅にて。
時刻は早朝、5:30。
レオが目を覚ます。
レックスは自室で寝ていた。
レオは完全に目が覚めてしまい、のそのそと本を読み始めたが、全部読み終わっていたためすぐに退屈になった。
「……ひま」
レオはふと思いつき、こっそりと家を抜け出すことにした。
大学に行く時、いつもレックスの車で走る道を、てくてくと1人で歩いていく。
レオはこの道しか知らないのだ。
いつもは車の窓から流れる風景が、この時はゆっくりと自分のスピードで眺められる。
レオはわくわくとした。
外は冷え切った空気が張り詰めていた。レオは寝巻き1枚で出てきてしまったことを後悔した。
てく、てく、てく…
そして、夜の大学に辿り着いた。
大学の正門は鉄の柵で閉じられていたため、中に入ることはできなかった。レオは仕方なく、正門を通り過ぎてそのまま歩道を歩いて行った。
そして見えてきた、人間研究所。
こちらは門はなく、自由に出入りできる。
レオは研究所の方へと向かって行った。
研究所の自動ドアの前に立つと、ドアが開いた。レオは中へ入っていった。
レオが辿り着いたのは、人間の飼育室。鍵はかかっていなかった。
重い扉を両手で開く。体が大きく成長したレオにとっては簡単なことだった。
レオは目を見開いた。
自分と同じような生き物が、たくさん檻に閉じ込められている。
鼓動が早くなった。
レオは歩き回り、No.18の前で立ち止まった。
「…………あ」
そのレオの声で、No.18が目を覚ました。
「「……」」
お互い、互いの存在に呆気にとられた。
檻の中のNo.18と、檻の外で自由なレオ。
グルルル…と18が威嚇しようとした時だった。
「活きのいいメスはどれだ」
何者かの声が入口の方から聞こえた。
コツ、コツ、コツ…と靴音が近づく。
次の瞬間、レオとNo.18がライトで照らされた。
黒いフードを被った3人組の猫だ。
「何だあ?!このオスは。檻から出てますぜ」
「何?見られたなら仕方ねえ。めんどくさいからこいつも連れてくぞ!」
「おっ、ちょうどいいからこのメスでいいな!」
大柄な猫はレオを担ぎ、小柄な方はにやにやとポケットから鍵を出し、No.18の檻を開け、18出した。
レオとNo.18が騒ぎ始める。
「ええい!静かにしろ!」
そして注射器で鎮静剤を注入され、2人は意識を失った。
次回に続く
※この物語はフィクションです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?