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緊急事態宣言が出たのでヒッタイト語を学んでみた

温泉に行けない。外出できない。緊急事態宣言が出たためだ。外で羽を伸ばすことができなくなり、休みの日が暇すぎる。

ということで、かねてから興味のあったヒッタイト語をきちんと学んでみることにした。存外面白い。使用テキストはテキサス大学がオンラインで公開している資料を読んでいる。

今日は"The Proclamation of Anittas (Old Hittite)"を通読した。楔形文字は流石に読めないけれど、テキストを読むと標語文字と表音文字が組み合わさった書き方をしており、現代の日本語とも通じるところがある。

例えばLUGALという文字があったら、意味としては「王」。この文字はヒッタイト語起源ではなく、おそらくシュメール語から文字と意味を丸ごと借用しているようだ。「ネサ(という町)の王は」という文であれば Nēsas LUGAL-usになるらしい。

NēsasはNēsaという固有名詞の属格で、語尾の-usは主格を表すなので「ネサの王は」という日本語同様、「王」という標語文字に格を表す表音文字がくっついている形になる。また、「王」の読み方が日本語や中国語でそれぞれ異なるように、ヒッタイト語で「王」は"hāssuwas"だから、LUGALと綴ってそのように読んでいたのではないか。

また他の古代言語を混ぜたハイブリット的な用法もある。古事記は『臣安萬侶言』と始まるが、例えば読んだテキストは「クッサラの王、ピサナの息子アニッタ言」というように始まる。この「言」にあたる言葉はヒッタイト語ではなく、アッカド語からの完全借用で"QI-BI-MA"を使う。アッカド語で「如此申す」という楔形文字を用いているようで、アッカド語のままで用いている。

現代の日本でもメールの最後にP.S.など他の言語の略語を用いることがあるが、それと似たような感覚なのだろうか。

このようにヒッタイト語が印欧語族にもかかわらずセム語や系統不明なシュメール語の影響を受けて用法を取りいているのは面白い。そしてそれは振り返ってみれば現代の私たちの言語生活と非常に似通ったことをしていることがわかり、逆に新鮮な気持ちになるのであった。

写真:

ID 14234767 © Anthony Baggett | Dreamstime.com


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