見出し画像

妊娠・出産で"損する"働き方ワースト3

もらえるお金に、最大578万円の格差

「働き方改革」で、”同一労働・同一賃金"も進められつつあるとのこと。子育て中の女性も、ライフスタイルや事情に合わせた働き方を、自らの意思で選択できるようになってきた気はします。

が、それでもやはり、この国はまだまだ「正社員が主役」であると、私は確信。なぜならば、妊娠・出産時における公的な手当を、このたび仕事で調べてみたからです。「当方調べ」ではありますが、この国では、働く女性が妊娠・出産した際にもらえるお金には、最大578万円の差があります。

もちろん、年収やキャリアの差もありますが、でもじつは、違いを生んでいる最大の理由は「働き方による格差」です。

フリーランスのAさんと、正社員のBさん

フリーランスのAさん(34歳)は、概ね毎月「手取りで35万円*」稼いでいると仮定しましょう。プログラマーで、スキルもキャリアを積んできた稼ぎ手さんといえると思います。

正社員のBさん(28歳)は、新卒の時からとある一般企業にお勤めで「手取り20万円」のお給料です。とあるサイトによると手取り20万円は28歳の平均値くらいのようです。

そんなおふたり、それぞれ初めての妊娠**をしました。
妊娠・出産で、ふたりの経済状況はどう変わるでしょうか。

28歳の正社員Bさんから見ていきましょう。

Bさんは、産前産後休業を経て、育休をとったうえで、産後1年ほどで復職をしたい、と考えています。Bさんが赤ちゃん1歳までの休業中にもらえる出産に関する手当金の総額は、約207万円です。

出産前後に85万円、産後はお休み明けまでおむねお給料の6割くらいがもらえます(会社からではなく、健康保険から)。働いているときよりは減ってしまいますが、今後の生活のめどは立てやすいのではないでしょうか。


↑ Bさんがもらえるお金の試算

では、Aさんは?

フリーランスのAさんも産後は仕事に戻りたいと考えています。また、Bさんと同じく産後1年ほどのお休みをとろうと思っていますが、Aさんには、いくらの手当てがでるでしょうか。

こたえは、42万円です。



↑Aさんがもらえるお金の試算

Aさんの生活はどうなる?

AさんとBさん、もらえるお金の差は、約165万円です。フリーランスのAさんは、仕事ができない期間のお金を、だれも保証してくれません。収入0で自力でどうにかするしかないのです。

これは、AさんがBさんより高所得だからではありません。仮にAさんが「手取り35万円」の正社員であれば、もらえるお金の総額は、どーんと上がって約332万円にもなります。同じ手取りでも、sフリーランスの場合の8倍ほどになります。ちなみにAさんが「手取り15万円」のフリーランスだと仮定しても、もらえるお金の総額は42万円です。

【おおまかな比較】

正社員(手取り20万円) → 総額207万円
正社員(手取り60万円) → 総額446万円
フリーランス
 (手取り20万円) → 総額42万円
フリーランス
 (手取り60万円) → 総額42万円
専業主婦(手取り0円) → 総額42万円

つまり、この国では、正社員とフリーランスなら、妊娠・出産時においては、圧倒的に正社員が金銭的に守られやすいということになります。また、比較からわかるように、総額42万円というのは、専業主婦さん(収入0円)ももらえます。このお金は「入院費などの分娩そのものにかかるお金の補填」的な意味合いだから、ほぼすべての人がもらえるのです。

フリーランスのかたは、産後、自らは産後の回復前の体で、赤ちゃんのお世話もあって仕事をすることができないのに、どうにか生活をやりくりするしかありません。フリーランスのかたが、かなり早めに仕事復帰をする事例は、わたしも周囲でよくみかけます。本来は休まねばならない時期に、まさに身を削って働くわけです。

と、いった働き方格差で
ワースト3が生まれてしまいます

先ほどは、正社員さんとフリーランスさんで比較しましたが、ほかにも働き方はいろいろありますよね。これらを比較してみると、働き方の違いで、産後の手当てに大差がつくことがはっきりします。詳細は割愛しますが、わたしの試算においては、おそらく下記が、妊娠・出産時において社会保障で金銭的な損をするワースト3の働き方です。

第3位…あちこちでアルバイトしている人

アルバイトを1か所ではなく数か所でしているかたは、「雇用保険」に入っていない可能性があります。「雇用保険」とは、失業給付をもらう時に役立つもの!と思いがちですが、じつは妊娠・出産においては、「育児休業給付金」の出所となります。

しかし「雇用保険」は、経営側の立場からすると、週に20時間以上勤務のかたが対象となるので、20時間以下の場合は対象外に。本人は、バイトをかけもちして合計週20時間以上働いているとしても、雇用保険に入っていなければ「育児休業給付金」はでません。

【おおまかな比較】
・1か所でアルバイト:時給1100円:週20時間勤務しているCさん***
 →毎月のバイト代 88,000円程度
 →「育児休業給付金」の総額 約53万円

・3か所でアルバイト:時給1100円:各社で週12時間(合計36時間)勤務しているDさん
 →毎月のバイト代 158,000円程度
 →「育児休業給付金」の総額 約0円

日頃、たくさんバイトをしているDさんが、なんと0円です。すごく不思議な制度です。


第2位...「辞める」と言ってしまった人

第2位については、公的な場で話すと少々問題があるので、あくまでも「個人」としてnoteに意見を記載という形にしたいと思いますが(あくまで個人の意見です、的な)

妊娠・出産において、仕事を「辞めます」というと、もれなくもらえるお金が激減します。額の大きな手当は、勤めていた勤務先に復帰することを前提としたお金だからです。

とはいえ、仕事を続けるつもりでいても、出産してみたら「赤ちゃんが小さめに生まれて心配」「自分の体の回復が遅れた」「子育てに専念したくなった」などで、仕事復帰を断念する人もいます。また、「別の会社で働いてみたくなった」ということもあるでしょう。

この場合、結果的に仕事を辞めたことになるのですが、もらったお金は返す必要はありません(!)。体の問題だけでなく「やっぱり復帰やーめた」でもオッケーとなってしまっています。悪用してもらっては困るのですが、つまり、現状は迷っているなら「復帰する」と言った人が金銭的には得をしています(悪用し、会社をだますようなことをすれば迷惑ですし、人としての信頼ポイントは下がると思いますが)。


第1位...フリーランスと自営業の一部の人

そして先ほどご紹介したように、フリーランスのかたは制度上、著しく不利です。自営業・経営者のかたもおなじです。ただし、経営者の中には、自社の社会保険に自分も加入していることが多いと思いますので、この場合は、「出産手当金」がもらえます。しかしこれも、自分で申請しないともらえません(知らなかった私も第1,2子で、もらいそびれています。笑)

#こんな社会だったらいいな
総活躍がしやすい仕組みに!

さて、本題。「 #こんな社会だったらいいな 」は、ずばり、安心して子供が生み育てられる国になりますように、です。どんな働き方であろうとも、働いてきたという事実を正当に評価してほしいなぁと思います。フリーランスでも、正社員でも、アルバイトでも、派遣でも、みんな生活のために働いてきたのだから、急にお金が止まったら困るのは同じなんです。まして、赤ちゃんが生まれるのに、自分は動けないわ、お金は止まるわ、って悪夢じゃないですか。

多様な働き方にチャレンジした人が、「1か所で毎週20時間働いていないとお金はもらえません~」と言われてしまうようでは、結局、みな企業の奴隷になるしかなくなります。経営者であるわたしが言うのも変ですが。

じつは最近、自社で「マネー診断ツール」というのを開発しました。アプリで、妊娠・出産におけるもらえるお金を、1分で計算できます。これで試算していただければ、だれでも簡単に自分のもらえるお金が瞬時にわかります。振込の時期も表記しているので、生活のめどが立てやすくもなると思います。

いいツールができたな~!!と自画自賛していますが、これを作っていく過程で、理不尽に社会保障がうけられていない「働き方」があると知ってしまいました。

妊娠前のかたも、男性も、総務課のかたも。そしてできればお国の方も。実際にどんなケースでいくらもらえてているのか、ツールで試してみてください。それで生活していけるかどうかもご検討いただけたらと思います。妊婦さんのために作ったツールですが、これが多くの方のお役に立てばなお嬉しいです。


長文、お読みいただきありがとうございました。

アプリは下記よりダウンロードいただけます。無料です。

「マネー診断」機能付き、ミルケアアプリはこちら


(以下本文の注釈です)

*便宜上「手取りで〇円」等の記載をしていますが、実際は、もう少し細かい計算が必要です(が、細かい計算をしても大きな違いは出ないと思われます)

**今回は「赤ちゃん1人の妊娠」で計算しています(双子・三つ子ではないということです)

***ややこしいので、ここではその他の条件は満たしていることにしておきます

そのた、わたしの認識違いや計算ミスがあれば、ご指摘をお願いいたします<m(__)m>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?