2017 山梨大学 医学部 看護学科 推薦入試 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


小論文I 人を育むことについて

多くの人は花が咲いている5日間くらいしか見ない桜を、桜守は一年中世話し続けている。桜守は毎日桜の声を聴き、光や土、水など周囲の環境とのバランスに注意する。桜は幹や枝に傷がつくと自力では傷口をふさげないので、人が手当てしなければならない。しかも桜は、親木と同じ木になることがないという点で多様性がある。
 私は、人を育むことは、桜守が桜の世話をすることに似ていると考える。桜の花が一年のうちのごくわずかな期間しか咲かないように、長く活動を続ける作家や芸術家といった一部の人たちを除けば、たいていの人にとって、世間から注目されたり、第一線で活躍したりできるのは、人生のわずかな期間だけである。しかし、それ以外の期間における準備や努力、失敗や挫折といったさまざまな経験がなければ、活躍の期間もなかっただろう。人を育むときに大切なのは、そうした活躍以外の長い時間をどのように過ごさせるかを考えることである。
 また、人は、育む側、教育する側の思いや意図とは独立に成長していくものである。同じ指導、同じカリキュラムをおこなったとしても、それを受容する人に応じて結果は異なりうる。そこにその人の個性、多様性が生まれる。
 そうであれば、人を育むときに必要なことは、桜と桜守との関係と類比的な、育まれる側の自主性と個性を重視しながら、長期にわたる肌理の細かい対応であると考えられる。 (578字)

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