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2017年度 慶應義塾大学 法学部 小論文(論述力試験) 模範解答

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 社会全体の利益に関わる冷静な討議と判断の場を設けるためには、公私の人為的な区分が必要である。そこで立憲主義的な憲法典では、比較不能な価値観を奉ずる人々が公平に社会生活を送る枠組みを構築するために、公私の人為的な区分を行い、警備する。したがって、立憲主義の原則とは、公私を区分することによって、個々人の生き方を自律的に判断する点であらゆる人の平等を認めることにある。つまり、異なる人生観や世界観をいただく人にも受け入れられるような議論を通じて、何がみんなのためになるかについて合意を得ようとする冷静な社会の構築を目指すのが、立憲主義である。
 以上が立憲主義の原則についての著者の理解である。著者の展開する立憲主義の考え方は、今後もわれわれが社会を維持するうえで妥当であるだろうか。私は、妥当だと考える。その理由は、大きく3つある。第一の理由は、社会がグローバル化し、価値観が多様化するなかで、公益性を担保した政策や法整備を行う必要があるからだ。グローバル化した社会においては、様々な価値観や考え方が流布し、一定の原則にもとづいた政策立案や法整備には、立憲主義の考え方が不可欠だと考えるからだ。社会全体の利益としての公益を考える立憲主義が、社会がグローバル化すればするほど重要になってくる。
 第二の理由は、少数派の信念や思想を保護し、多様な文化が共生できる社会を維持するためである。少数派でありかつそれを多数派が認めないという理由だけで、少数派の信念や思想が侵害されることは不当であり、結果的には社会全体が不利益を被ることになる。なぜなら、多様性が認められなければ、信念や思想が画一化し、社会の発展や進歩の余地がなくなってしまうからだ。したがって、立憲主義は、少数派を正当に保護し、多様な文化の共生を認める実践的制度と言える。
 第三の理由は、多数派であるというだけで、正当か否か不明な考え方や価値観が支配的なものになることを防止する点で立憲主義が有効であるからだ。ポピュリズムが台頭し、民衆の人気によってのみ主導される政治がかつての民主党政権の日本でも見られた。多数派であることと、正当であることは異なる。社会全体の利益にかかわる判断を正当に行うためには、立憲主義の原則が必須である。
 以上より、立憲主義は採ることは、社会を維持する上で妥当だと考える。

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