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2020年度 慶應義塾大学 法学部 小論文(論述力試験) 模範解答

西欧文明の科学技術体系が示す普遍性や西欧列強というアジアを優越する者との出会いによって、アジアは自らのあり方を「遅れ」とみなし、改めるべきであるという危機感にもとづきアジアにおける近代化が生じた。さらに、この近代化の過程においてアジアのアイデンティティーが崩され、アジアは自己を統御する働きを欠き、社会の不安定化をもたらした。しかし、アジアの内部において近代化に対する新たな認識が芽生えた。つまり、アジアにおける近代化とは、それぞれの地域や国、文化の中で、独自性をもって取り組まれた社会変革と自己変革の努力であった。さらに、近代化は各国や各々の文化のなかで多様な仕方において取り組まれた自己実現の過程である。したがって、アジアにおける近代化の努力に各々の国家や文化の独自性や多様性を認めるならば、自分たちとは異なった他者の存在を認め、その尊厳を重んじ、共存を図ることがいかに重要であるかが理解できる。

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