2018年度 立教大学 アスリート選抜 小論文 模範解答
小論文:800字
筆者によれば、「所有」とは、あるものを個人や企業が購入して使用することであり、「共有」は、個人や企業が所有しているものを、複数の人が使用することである。この意味における「共有」は、自動車に限らず、民泊や部屋の賃貸などでも以前から行われてきた。「共有」は、「シェアリングエコノミー」とも呼ばれ、ひとつの会社や住宅に固定されない生き方として、20代から30代の世代で好まれている。
「共有」を好むこうした傾向について、私は、日本の社会的な情勢を踏まえれば当然であると考える。第一に、バブル経済が崩壊してから、日本の世帯所得の中央値は100万円以上低下しており、とくに20~30代の比較的若い世代の年収は伸び悩んでいる。くわえて、正規雇用よりも年収が低くなることが多い非正規雇用労働者の割合も、この30年間で10%以上増加した。これに伴って晩婚化も進んでおり、初婚時に20~24歳である女性の割合は低下を続け、反対に、30~34歳で初婚を迎える人の割合は増加し続けている。つまり、若い世代の収入不足、雇用の不安定化、単身者の増加といった点を考慮すれば、維持に費用がかかる自家用車や、何十年もローンを組む必要がある家を「所有」することは、リスクが大きいと言わざるをえない。むしろ、家も車も、必要なときに必要な分だけ使えればよいのであって、それ以外のときは他人に使ってもらうほうがよいし、そもそも維持するだけの十分な収入がないのである。
筆者は、「共有」の増加を、エコロジーな意識――「ありものを使うことは、地球にやさしい」――と結びつけているが、これは的外れである。「共有」の増加の主要因は、そのような漠然としたイメージではなく、より切迫した経済的事情や労働環境が影響していると考えるのが妥当だろう。
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