2020年度 慶應義塾大学 文学部 小論文 模範解答 

設問I:300~360
21世紀における集団のあり方として、筆者は、「状態」としての多文化主義を提唱する。これは、従来の政策としての多文化主義とは異なり、移動する人が受入先の社会に統合されることを求めず、複数の文化的集団が相互に尊重しあいながら「よそよそしい共存」を実現するものである。このような多文化主義の基礎となるのは、従来の社会思想における抽象的な個人ではなく、さまざまな差異を持ち、別々の良心に従って行動する多様な人間である。このような人間たちが相互的な寛容の原則のもとに生き、参入と脱退の自由も保障されるのがこの社会である。ここでは、国家や政府も数多くの結社のひとつにすぎない。そのような社会は、現実に分散的なネットワーク社会が存在することや、インターネットなどによって情報伝達のコストが低下していることから、十分に成立可能である。(358字)
 

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