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2022年度 慶應義塾大学 法学部 小論文(論述力試験) 模範解答

 病気や貧困が悪であるといわれるのと同じ意味において、戦争が害悪であり不幸であることは事実である。しかし、戦争が悪であるということだけでは道徳や倫理の問題にはならない。というのも、戦争による苦痛や損失を避けることは、我々の自然の傾向であるからだ。したがって、我々が戦争を罪悪として平和を主張しようと思うならば、感情論や苦痛を避ける我々の傾向性からではなく、我々自身が倫理的規範の意識を有し、道徳の観点に身を置いて戦争を抑止するための拘束力を機能させる必要がある。しかし、倫理や道徳さらに政治は、他を非難し、他に罪をなすりつけるためのものとしてしか機能しない。それゆえ、戦争の罪悪や不正に対して法律論や道徳論を持ち出すことは戦争を抑止する方策とはならない。したがって、戦争の原因を研究し、戦争を防ぐための法的規制を立法の場において整備することが、平和を作り出すための最も有力な手段である。

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