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2021年度 慶應義塾大学 法学部 小論文(論述力試験) 模範解答

 

 著者は聖書における「一匹と九十九匹と」という比喩を、政治と文学の差異として解釈する。つまり、政治はそれがどれほど善い政治であっても、九十九匹までしか救うことができないのに対し、政治によって救われることのない一匹を救うものこそが文学であるという。したがって、政治によって救われる者とその政治によって救われない者を救う文学とでは、救いの対象や目的、方法が異なる点において区別され、政治と文学の関係は対立的であるとされる。さらに著者は、政治と文学との対立の根底には個人と社会との対立があるという。つまり、一方において社会は個人を自らのうちに包摂し、社会から逃れる者を想定しないため、社会が許容するあり方以外に個人のあり方や価値を認めようとしない。他方で、社会正義が表では肯定されながら、その裏では個人は自らの価値観を実践しようとするエゴイズムを発揮する。しかし、著者は政治と文化との一致、社会と個人との融合を理想であるという。

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576字

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