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ソムニウム(23)アゲハ


春の山道を歩いている
杉の木立の木漏れ日の中に
女の子が立っている
瑠璃色のワンピースを着ている
しらんぷりして通り過ぎる
道の行く先に立っている
ふんわりにこにこ笑っている
ひらひら後をついてくる
きらきら頭上で太陽が光る
瑠璃色の粉が舞い上がる
あなたのことを待っていた
あなたと一緒に生きたいの
それもいいかな、と考えて
女の子の肩を抱きよせる
肌がとても柔らかい
体がすごく軽そうだ
しなだれかかった女の子が
あ、と驚いた顔をする
緑色の皮膚の大きな女が
茂みの中から現れる
両手が鎌になっている
女の子を引っかけ拐っていく
木立の奥で食べ始める
木漏れ日の影と光の中で
女が女を食べている
音もなければ声もない
目を離すことができなくなる
蝶の首をぶら下げて
蟷螂の頭がぐるりと回る


(終わり)

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