見出し画像

ソムニウム(87)六月の刀


六月の晴れた道をいく
歩道を外れて柵を超え
他人の敷地の植え込みを踏み
窓をまたいで家の中へ入る
中に人の気配はない
カチコチ時計の音がする
深い角度で差し込む光
真っ暗な部屋を通り抜ける
階段を上って二階へ上がる
くの字に折れてさらに上へ
屋根裏部屋へ這い登る
埃をかぶった古物の中に
布で巻かれた棒がある
開くとそれは軍刀だ
刀身を抜くと錆びておらず
刃紋がぎらりと光を弾く
物打のあたりに凹みがあって
人を斬ってる、と思った瞬間
ここが昔住んでた家で
自分に体が無いことを知る
らべらぶりあは、
と声がして
古物の中に埋もれている
骨壷の中で骨が鳴る


(終わり)

長編小説は完結するまで、詩は100本書けるまで、無料公開しています。途中でサポートをもらえると嬉しくて筆が進みます☆