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(基本解説011)「社会主義」と「共産主義」の違いを知っておこう

(政治や法律の基本解説)
(4分で読める)



社会主義とは ...
資本主義の欠点を補おうとする思想で
「共産主義を実現する為の前段階」の体制をいう


共産主義ユートピアとは ...
将来の「理想の平等な社会体制」で
前段階である社会主義思想の理想形をいう





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資本主義の欠点を補う社会主義思想

 「資本主義」では、できるだけ自由な経済環境で個人や企業に積極的に競争してもらう。その結果として、市民が求めるさまざまなサービスや製品が生まれて社会が豊かになっていくことを目指しています。しかし、資本をもとに企業が競争で勝つためには長時間労働や、貧富の差が拡大するという問題もあります。「社会主義」は、そうした資本主義の欠点の部分を是正しようとして生み出された思想です。

社会主義の理想形が共産主義

 「社会主義」では資本は国のもので、国がそれらを管理して平等にする体制です。個人が資本を所有することは認められません。社会主義の理想的な思想が「共産主義」であり、社会主義の進化版ともいえます。実際にはソ連や中国、キューバ、ベトナム、北朝鮮が採用していた思想や政治体制です。社会主義革命を起こした後にレーニンやスターリン、毛沢東、金日成が勝手な解釈で社会主義国家をつくったため、そのいずれもが大失敗をしました。

共産主義はユートピアの世界

 「共産主義」とは、資本や財産をみんなで共有する平等な社会体制のこと。土地や財産などはすべて国のものとなり、みんなで共有します。生産されたものもみんなのものとなり、均等に分配するという考えです。そうすることで困窮というものがなくなり、やがて争いがなくなって人類が平和になるという、いわゆるユートピアの世界です。資本主義は資本を持っている人が富を独占して人々の間に貧富の差が生まれ、資本家ばかりがお金を増やすようになる。それ以外の労働者は一向に豊かにならず、これが資本主義社会の限界と考えました。ですから、資本主義とは正反対の考え方です。

共産主義と社会主義の違い

 では、「共産主義」と「社会主義」は何が違うのでしょうか。実は「社会主義」と言うのは、あくまで「共産主義を実現するための前段階」の体制という考え方です。つまり「将来的には共産主義を実現したい。ただ、いきなり実現するのは難しいので、その前段階として社会主義的な政治を行う」ということです。「資本主義」思想の対極には「共産主義」がある。その「共産主義へ向かう前段階」として「社会主義」が生まれたと言うことです。

実際の社会主義国家はうまくいかなかった

 実際に理想の社会をつくろうとしたら、さまざまな問題が起きました。すべては計画生産(計画経済)が基本です。たとえば、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)では、女性のブーツは来年何足つくるとあらかじめ計画を立てる。すべて計画によって生産過程がコントロールされます。売り出されたら、それしか買うことができないのでデザイン性などはまったく無視。ダサいブーツしか店頭に並ばないので大量の売れ残りがでます。たまにおしゃれなブーツがでようものなら、あっという間に売り切れてしまいます。いつそれが売り出されるかわからないから、どこかに行列ができる。そうすると店員に賄賂を払って裏でこっそり手に入れる人がでてきて、世の中不公平だという不満が高まってきます。

自由な言論が抑制されていく

 ソ連にしても中国にしても、このように人々の不満が高まっていきます。そうなると資本主義に戻そうとするに違いない、だから資本家たちの考え方が世の中に広まらないように言論を統制しようということになります。自由な言論が抑圧され、共産党を批判する人たちは資本家の手先である、というかたちで捕まっていく、場合によっては処刑されるという状態がずっと続きました。よかれと思ってつくった社会主義の体制が、資本主義に対して大変な遅れをとってしまったということです。

資本主義の負の側面が再び

 マルクスが資本主義を分析する限りにおいては、資本主義の問題点というのを、かなり的確に指摘している部分があります。しかし、それを解決しようとしてつくった社会主義は大きな失敗に終わってしまいました。
 ところが、2008年のリーマン・ショック以降、失業者が街にあふれ、派遣切りが次々に起きてきました。21世紀に入って以降、一般市民が不公平感を募らせるような資本主義の“負の側面”が目立つようになっています。


参考文献
『政治学小辞典』 堀江湛・加藤秀治郎  一藝社
『高校生でも読める「共産党宣言」』PARCO出版
『池上彰のやさしい経済学』 池上彰  日本経済新聞出版社
など



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