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(基本解説012)天皇が「象徴」なら国家元首は誰なのか

(政治や法律の基本解説)
(3分で読める)



天皇は象徴であり政治の実権を持たない

では「国家元首」は誰なのか



天皇は国民ではないので

結婚、職業選択、居住移転などの

自由はなく、選挙権も認められない





日本国憲法 第一条

天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

Article 1. The Emperor shall be the symbol of the State and of the unity of the people, deriving his position from the will of the people with whom resides sovereign power.

口語訳
天皇は日本国と日本国民の「シンボル」です。この地位は、日本国の実権を持っている日本国民全員が認めたから許されます。




日本国憲法には「元首」の規定がない

 日本国憲法には「天皇は日本国の象徴である」というだけで「元首」の規定はありません。象徴とは抽象的な考えや物ごとを具体的に表現した記号のことです。また「象徴」といったとき、それは同時に天皇は政治に対していかなる実質的な力も持たない、と規定しているのと同様です。その国の代表者を意味する「国家元首」。では、いったい日本の国家元首は誰なのでしょうか。「元首」とは外国に対して国家を代表する人のことです。例えば、2023年時点、アメリカの国家元首はバイデン大統領で、イギリスの国家元首はチャールズ3世です。

「象徴」と「国家元首」は同じ意味

 GHQは日本国憲法を作成するときに、天皇はイギリスのウェストミンスター憲章にならって「象徴」にしようとしました。素人集団で日本の事情への無理解が戦前の天皇を独裁者だと勘違いしたので「イギリスのような、君臨すれども統治せずの存在になりなさい」と「象徴」を持ち出したのです。日本政府は「国家元首の意味ならば受け入れよう」ということで「象徴」を承諾しました。じつは天皇は戦前から「象徴」だったのです。当のイギリスでは「象徴」と「国家元首」は同じ意味で使われています。押しつけたGHQも押しつけられた日本政府も「象徴天皇とは“元首天皇”の意味だ」との合意が存在していました。

海外からは天皇が国家元首の扱い

 海外の大使の信任状(この人物を大使として認めてください、という出身国の国家元首からの挨拶状)の宛先は天皇ですから、海外からは天皇が国家元首の扱いを受けています。そこで自民党の憲法改正では、天皇を国家元首として明記しようということになっています。ただ、実際には天皇の元首をめぐる論争もあります。実質的な権限を含むものとして使われることもあり、象徴以上の役割や機能を認めてしまうおそれもあるということです。

皇族には義務はあっても権利はない

 天皇を含め皇族の方々は、憲法で政府が国民に保障している様々な基本的人権が制限されています。皇族は国民ではないからです。婚姻の自由や表現の自由、職業選択、居住移転などの自由もなく、選挙権すら認められていません。財産はGHQに取り上げられたきりなのに、世界各国の国家元首との交際を行わなければなりませんし、納税の義務だけはしっかりあります。週刊誌や口さがない(悪く言いふらす)人々の発言で、名誉毀損はやられ放題です。皇室に義務だけあって権利がない状態なのです。



参考文献
『確認憲法用語300』大沢秀介 成文堂 
『超訳日本国憲法』 池上彰 新潮社
『13歳からの「くにまもり」』倉山満 扶桑社新書
『間違いだらけの憲法改正論議』倉山満 イースト新書
など




1,507字





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