期待に応えなくてもいいのだ
犬という生き物は本当に従順である。
これは夫の実家で飼っているパピヨンの「さくら」(女の子)と旅行へ行った時のお話。
さくらはとても人懐っこく、誰にでも飛びつく。郵便屋さんでも宅配便のお兄さんでも誰でも。なので番犬には向かない。
そんなさくらと過ごした1泊2日の旅行のお話。
さくらは初めて会う私にも、すぐに心を開いてくれた。行き先は和歌山。犬と一緒に泊まれるコテージがある。
行きの車中、さくらはずっと私の膝の上で外を眺めたり眠ったりしていた。
途中のサービスエリアでも、外で一緒にご飯を食べたり芝生を走り回ったり。犬が大好きな私にとって一緒に遊べるのは本当に楽しかった。
目的地の和歌山でも、ドッグランで遊んだり追いかけっこをしたり。
とても楽しい1日だった。
次の日の朝、夫はさくらにドックフードをあげていた。夫曰く、さくらは体も小さいので少食だそう。横で見ていると、本当に驚くほど少食である。ドックフード5粒くらいしか食べていなかったように思う。
小さい頃、祖母の家で飼っていた犬の記憶から、犬はガツガツ餌を食べて、食べ終わってもまだ欲しそうにしていて、仕方なくおやつをあげるのがデフォルトなんだと思っていた。
私は少食具合に驚き「さくら、全然食べてないやん。もっと食べなあかんで」と言いながら何気なくドックフードを触っていると、さくらがやってきて食べ始めたのだ。
「なんや、やっぱり食べられるんや!さくら、すごいなー」と声をかけた。餌を手に乗せてあげると食べるので、そうやってあげているうちにいつの間にか完食していた。
しばらくして、ふとさくらのほうを見るとベッドの上で嘔吐していた。食べ過ぎたようだ。さくらは初めて会う私に気を遣って、お腹いっぱいなのにわたしの期待に応えるかのように、頑張っていつも以上にご飯を食べて嘔吐した。
私たちがシーツを洗う後ろで、さくらは申し訳なさそうな顔をしてしょんぼりしていた。
さくらは私に好かれようと、本当に頑張ってくれた。私はそれに気づかず、私の知っている犬らしさをさくらに期待していた。犬は犬らしくガツガツ餌を食べるものだと。
さくらはまるで人間のような感情を持っている。人は期待されると、なんとかそれに答えようと必死で頑張る。その期待が大きければ大きいほど、頑張れることもあるが、反対に頑張り過ぎて壊れることもある。体が壊れたら元も子もない。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。「さくら、ごめんね。いっぱい食べさせて本当にごめんね」と何度も謝ったが、さくらはしょんぼりしていて元気がないようにみえた。
帰りの車中、私たちはお腹が空いたので、モスバーガーでドライブスルーをした。
ハンバーガーを食べようとしていたら、さくらが「わたしも、わたしも」と言わんばかりの勢いで、私のモス野菜バーガーを食べようと飛び付いてきた。
やはり、さくらは犬なのだ。
※さくらにモスバーガーはあげていません。
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