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はじめに


去年7月21日、参議院選挙の後に行われた世論調査の報道を私は食事の片手間に見た。その世論調査で国民に何を問うたかというと「見事勝利を収めた自民党政権に求めるもの、期待するものは何ですか?」という内容でありその回答として最も多かったのが「社会保障の充実」であった。ここでの社会保障はおそらく老後の保障、つまり年金などのことであろう。これは多くの日本国民が老後という将来に対して強い不安を抱いていることを明らかにしたと思う。この当時は老後に二千万円必要と記された金融庁の資料がメディアによって注目されたこともあり、不安が余計に増長したと考えられる。国民が社会保障制度の充実を求めているということは今の社会保障制度のままでは遠からず確実に崩壊すると国民が理解しているということだ。なぜなら日本の少子高齢化は確実に進んでゆくからである。福利厚生の充実、医療技術の向上によって私たちの寿命は大きく伸びると同時に産まれてくる子供の数は以前と比べて減少した。つまり日本国内で人口の置換がうまくいってないという現実に直面している。これでは高齢者層を生産年齢人口が支えることもできず日本の人口は徐々に減少し今の日本の経済規模を維持するのは不可能になる。これが日本は衰退途上国などといわれている原因の一つだ。この少子高齢化問題は日本のありとあらゆる社会問題の根底にあるといっていいだろう。日本の社会問題の多くを辿れば少子高齢化による人口ないし生産年齢人口の減少にたどり着く。この奥底で鎮座している問題を解決することができれば多くの問題が連鎖的に解消されることだろう。それゆえ少子高齢化問題は難題でありそれに見合った価値を内包している。この評論ではまず日本の人口が江戸時代から現代まで増加してきた歴史を確認し、人口という概念に対する深い理解を得る。それには人々がどのような暮らしを営んでいたかについて触れないわけにはいかないだろう。そのため人々の生活に大きな影響を及ぼすであろうと考えられる経済状況に重点を置き、出生と経済の関係を見ていく。そして近代、現代の出生数と合計特殊出生率というデータに着目しなぜ日本では出生数、率が年々減少しているかも考えたうえで少子化の対策を論じ私なりの考えを述べたいと思う。この評論の主題は人口、出生率の変遷を提示し何が人口、出生数、率を左右するのか私なりの意見を交えて考え、今後の少子化対策に役立てることを目的とするものである。最後に少子高齢化の核心的な部分である生産年齢人口の減少を解決する手早い方法として外、海外から労働力を受け入れるという方法があるがこの論考では考慮しない。この手段はすでに難民を受け入れる名目でEU圏内に用いられているが低賃金で働ける外国人労働者によって自国民の雇用が危ぶまれているという事実があり、グローバリズムがもたらす標準化の反動としての反EU、反グローバリズムを掲げる極右政党が台頭している。このような移民政策が招く現実は自国民の豊かな生活を最優先に保障しなければならない政府が安易に行うべきではない。移民政策は苦肉の策として認識されるべきものであり不断の努力で少子化対策に注力した先にあるものなのだ。

まず出生率というデータに対して誤解している人がいる可能性があるため予め述べておく。出生率は結婚した女性一人当たりの子供の数だと思われがちだが、実際は一年間で産まれた出生数を出産能力のある15から49歳の女性の人口で割ったもののため、未婚女性も分母に含まれている。そしてそれぞれの年齢別出生率を合計したものを合計特殊出生率と呼び、女性が生涯を通じて産む子供の数を表す近年最もよく使われる欠点の少ない指標である。続いて人口学という学問があることをご存知だろうか。これは人口の趨勢を分析する学問である。しかし人口学は少子高齢化が現在進行形で加速する日本において盛んとは言い難く、文献が多く出回っていないのは非常に残念である。人口学はいくつかの分野に分かれており人口現象の統計的分析、研究を目的とする形式的人口学。そして政治、経済などの人間を取り巻く環境が人口に与える影響を分析する経済人口学、政治人口学などがある。そしてここからは経済人口学の観点を歴史にあてはめ、人口と経済の関係を日本の江戸時代からさかのぼって見ていきたい。

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今年の3月、4月にコロナ禍真っ只中で暇なテルが書いた人口問題に関する論文じみた文章です。人口や少子化という概念を歴史的に分析し、主に人口と…

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