見出し画像

【第2回ポリガレ『飛ぶ教室』】スモールスタートでもうサボらない!

PolicyGarage

どうも、先延ばしのスペシャリスト、山本です(プロフィール)。

もう夏が終わり、1年の半分以上は残酷にも過ぎてしまいました。多くの人は正月などに、その年の目標を決めますが、みなさんの目標はなんでしょうか?その目標は順調に達成できそうでしょうか?私(ガリガリ)は、多くの人がそうであるように、きんにくんのようなマッチョになるために毎日1時間の筋トレをするなど高い目標を掲げ、1ヶ月も経たないうちに挫折してしまうことを繰り返してきました。¹

運動などを継続しようとする時、習慣づく前は多くの人が辛い嫌気や面倒だという気持ちと戦うことになります。²  それはどうやってクリアすればいいのでしょうか?いろいろな方法がありますが、本日はスモールスタートをみなさんに紹介します。アイデアは簡単、まずは小さくはじめて続けてみることです。Hollinsは自身の著書 ”The Science of Self-Discipline” で健康的な身体を作りたいならば、いきなり激しい筋トレをするのではなく、20分のウォーキングなど楽なものからはじめれば、自分の脳も無理なく受け入れることができ続けることができるはずだと主張しています。

このアイデア、運動以外にも広く使えそうです。UCLAの教授Hershfieldらの最新の大規模フィールド実験で衝撃的な結果がでました!この実験では金融技術会社Acornのスマホアプリユーザー約9,000人に$150/月預金してもらうプログラムを打診しました。ユーザーをランダムに分け、³  1つのグループにはそのまま$150/月を預金するというフレーミング ⁴  でプログラムの提示をしましたが、もう1つのグループには$5/日というフレーミングで提示をしました。

画像1

図1:プログラム提示の際のスマホのアプリ画面の例。[]内がフレームごとに違ったものが表示される

すると$150/月のグループが7%の参加率なのに対し、 $5/日のグループが30%と、$5/日のグループのほうがなんと約4倍ものユーザーが参加したのです。さらに、プログラム3ヶ月後の結果を見ても$5/日のグループは19%に落ちてはいますが、$150/月の5%に比べ有意に高くなっています。大体同じ金額を預金するプログラムなのにこれだけの差がでるとは、驚きですよね。

画像2

図2:0,1,2,3ヶ月後のグループごとの預金プログラム参加率。$5/日のグループ(左)$150/月のグループ(右)

この結果の要因としていろいろなものが考えられますが、スモールスタートが関わっているでしょう。1日$5なら負担も大したことはないし、始めてみよう、と思ったのではないでしょうか?一方1ヶ月$150と聞いて、えっ、そんなに・・・と尻込みしたかもしれません。ペンシルベニア大学教授 Katy Milkman のポッドキャスト S8 Ep. 1でのこの著者との対談で、この可能性について議論していますので、興味があれば聞いてみて下さい!


さて、まだ2021年は終わっていません。私の筋トレのように失敗してしまったみなさん、目標を諦めかけてどうしようか悩んでいませんか?また、自分自身だけでなく、なかなか目標を達成できない人々のためにどんな有効的なプログラムを作っていけばよいでしょうか?そんな時、スモールスタートの考え方が使えるかもしれません!

注釈
¹ 将来の予想を楽観的に考え、かかる時間を甘く考えてしまうことをPlanning fallacyといいます。Planning fallacyもこの例には深く関係があります。
² Phillippa Lallyの実験では平均66日間が習慣づくのに必要でした。
³ 合計で5つのグループがありましたが、今回はそのうちの2つのグループを紹介しました。
⁴ フレーミングとは同じ結果のものを説明の仕方、言い回し、表現などで見せ方を変えることです。これによって行動や選好が変わることがわかっています。有名なのはロスフレームとゲインフレーム。500人の病人を薬で300人助けられるというのがゲインフレームで、薬で200人死んでしまうというのがロスフレーム。しかし、この実験では$150/月のグループは月毎に$150が引き落とされ、$5/日のグループは1日毎に$5が引き落とされるので、結果が完全に同じではないことは懸念されます。


References:
Hershfield, H. E., Shu, S., & Benartzi, S. (2020). Temporal reframing and participation in a savings program: A field experiment. Marketing Science, 39(6), 1039-1051. 
Hollins, P. (2017). The Science of Self-Discipline: The Willpower, Mental Toughness, and Self-Control to Resist Temptation and Achieve Your Goals. PH Learning Inc. 
Lally, P., Van Jaarsveld, C. H., Potts, H. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European journal of social psychology, 40(6), 998-1009.


『飛ぶ教室』は、ドイツの作家エーリッヒ・ケストナーの、知恵と勇気を題材にした児童文学小説です。
タイトルの『飛ぶ教室』は、小説内の戯曲の題名で、世界中を飛び回って現場から学ぶ、未来の理想の学校を描いています。
知恵と勇気を持って社会を変えようとする方のために、最先端で現場主義の学びの場を提供したいという想いを込めて、ポリガレの『飛ぶ教室』を開講します。
この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!