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警察学校ってきついの?⑤(自律神経おかしくなっておしっこ出なくなった件)

警察学校の終わりも見えて来た頃、もう特にきつさも感じなくなっていました。逆に、ここでの毎日に終わりが来るというのが寂しくなってきます。地獄のような場所を共に苦しんで乗り越えた仲間達はまるで戦友でした。

卒業が見えてくると、毎晩のように同期と語り合っていました。この半年は人生の中で最も忘れられない特殊な半年間でしたね。

慣れて来たとはいえ教官はやはり怖い存在でした。そんな中、警察学校最後の試験で教官の恐ろしさを再度見せつけられることになります。

大卒期は警察学校で半年間勉強します。ちなみに高卒期は10か月間です。私は大卒だったので期間は半年間、定期試験は2回ありました。試験といっても普通の学校と違うので成績が勤務評定になり、卒業時に成績が優秀で表彰された者は他の者より一段階給料が上がったりします。

また、術科にしろ座学にしろ、成績が悪いものはやる気がない奴として扱われ、教官からボロクソに言われます。また下限値と言って、試験でいわゆる赤点的な数値を下回った科目があると膨大な課題が出されしばらく週末はその課題に忙殺されることになります。

さて、最後の定期試験の科目の一つに、3時間くらいかけて一つの書類を書き上げるという試験がありました。講堂で同期170人全員一斉に試験を受けます。

この試験の開始一時間くらいで自分はトイレ(小)へ行きたくなってしまいました。それまでの人生でも試験中にトイレに行きたくなったことなんかなかったのに、まさか警察学校でそんなことになるとは思いませんでしたね。原因はコーヒーです。

我慢しようか迷いましたが、まだ2時間以上あるし、我慢するという選択肢は捨ててすっきりしてから試験に集中しようと考えました。これが運の尽きです。

手を挙げると教官が一人すぐ来てくれました。そしてトイレへ一緒に行きます。私が前を歩き、教官がすぐ後ろからついてくるという感じです。先に私が講堂から出た直後、後ろを歩いていた教官が講堂のドアを思い切り蹴りました。

蹴った音が講堂で響き渡ります。

そして、「敬礼すれやー!」という怒鳴り声。

試験を受けている同期はみな一瞬何が起きたのか、と凍り付いたはずです。

講堂には日の丸が掲揚されています。警察官は日の丸に敬礼しなければいけないので、講堂を出る時と入る時は敬礼をしなければいけません。試験中トイレへ行きたいという緊急事態に、私はすっかり講堂を出る時の敬礼を忘れたので怒鳴られたというわけです。

問題はここで私の自律神経が完全におかしくなってしまったということです。

とりあえず教官に謝罪をして、トイレへ入るのですが、変な緊張と驚き、動揺、ショックやらでトイレ(小)をしたいのに全く出ないのです。

トイレのドアにはさっきの教官が張り付いて、こっちを見ながらトイレが終わるのを待っています。しばらく頑張ったのですが、どうやってもダメそうだったので諦めて講堂に戻りました。

それからの2時間、トイレには行きたいけど出そうにもないという、かつて経験したことのない意味不明な身体状態で過ごしました。二度と尿が出ない体になってしまったのかと心配すらしました。

試験が終わると、同期みんなにいじられます。お前のせいでビックリして、みんな頭真っ白になったぞ、などと言われる始末です。

「いや、確かに敬礼忘れたよ、忘れたけどさ。だけどさ……。そこまでしますか?!教官!!」って今でも言いたい。

慣れてきても油断は禁物。警察学校はやはり恐ろしい場所です。


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