自己中心主義勇者 egoistic hero
第九十話 ドグマの願い
シュウとの面会を終えて部屋を出る時カズマはシュウに義手をつける事を提案した。
シュウの神経と繋げれば自分の意志で動かせる義手。
それが成功すれば脳に映像を送る事ができるゴーグルを取り付ける事もできる。
しかしシュウはこれをあえて辞退した。
オラの事より他にやる事がカズマさんにはあると。
カズマはその言葉を重く受け止め黙って去るしかなかった。
サンライト城へ戻る道中でドグマと話を始める。
ドグマ:「で?旧世界へ帰るのはいつなんだ?」
カズマ:「俺はシュウの体を治してからにしようと思ってたんだが・・・」
ドグマ:「奴は望んでないようだったな・・・」
カズマ:「目が見えないのはなんとかしてやりたいんだがな。」
ドグマ:「ん~俺もよく知らんが奴は心眼を持っているらしいから普通の生活なら問題ないはずだ。」
カズマ:「心眼?そんな事もできるのか・・・」
ドグマ:「ああ、だからそれよりオマエはオマエ自身の事をなんとかしろって話だ。」
カズマは頭をかきながら話を続ける。
カズマ:「実はマリには断られたよ。連れていきたかったがアイツが嫌なのを無理やり連れていけねぇ。」
ドグマ:「あ~スマンな。その件では俺も余計な事言ってしまった。」
カズマ:「多少関係あるだろうがオッサンが気にする事はないさ。マリが自分自身で決めたんだ。『予言の書』でも俺は一人で帰るらしいからな。」
ドグマ:「そうなのか?じゃあメイもこっちに残るのか・・・」
カズマ:「今からコンピューターに聞いてみるよ。旧世界に戻る方法はコンピューターしか知らない。」
ドグマ:「・・・」
急に黙り込んだドグマにカズマが尋ねる。
カズマ:「どうした?オッサン。」
ドグマ:「オマエ・・・こっちに残らんか?」
ドグマの意外な提案にカズマは驚いた。
カズマ:「こっちに残る?」
ドグマ:「お前が嫌じゃなければサンライト城に残ってもいいんじゃないか?」
カズマ:「・・・」
ドグマ:「ゴ・・・ゴホン!お、俺はどっちでも関係ないがマリ様やメイは残ってほしいんじゃないか?」
ドグマは咳払いをしながらやや恥ずかしそうに提案する。
こちらに残るという選択肢はカズマの中になかったのでドグマの提案はカズマの心を大いに揺さぶった。
『それもありっちゃぁありなんだが・・・』
カズマはそれから考え込んでしまった。
ドグマも急に黙ってしまったカズマの様子を気遣って何も言えない。
ドグマ:「じゃあ俺は寝るから何かあれば連絡くれ。」
カズマ:「ああ、お疲れさん。」
二人はそう言ってサンライト城の大広間で別れた。
カズマは旧世界へ戻るかここへ残るかと葛藤しながらコンピュータールームへ向かった。
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