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High Art × High Fashion

アートとハイファッションのコラボレーション、興味深いテキストがあったので、整理しておこうと思った。

パート1は、アーティストとファッション・デザイナーのコラボレーションが商業的な成功に繋がることへの発見についてルイ・ヴィトンを例に出す。

アートとファッションの関係は、イヴ・サンローランのモンドリアン・ドレスや、マティスとのコラボレーションに始まる。いわゆるモンドリアン・ルックであり、ドレスコード展でも提示されていた。

ただし、これはコラボレーションというよりはオマージュ、初のコラボレーションは、スキャパレリとサルバトール・ダリとのシュルレアリスムのスタイルとしている。

Schiaparelli and Dalí bonded over their desire to shock an audience, push the conventions of beauty, and challenge gender stereotypes, leading to more than a one-off collaboration.

観客に衝撃を与えたいということ、美の常識を覆しということ、そして、ファッションに内包された、それまでのジェンダーのステレオタイプへ挑戦することに繋がっていった。スキャパレリとダリのコラボは、様々な挑戦を行うが反発も受けた。

しかしながら、アーティストとのコラボレーションの道筋をつけた。

ここからルイ・ヴィトンの戦略的パートナーシップへとシフトする。

マーク・ジェイコブスがクリエイティブ・ディレクターになり、ルイ・ヴィトンの伝統的なモノグラムにスティーブン・スプラウスのグラフィティをのせた。これはルイ・ヴィトンのロゴを汚すと表現している。

In 2000, the first collection of artist-designed bags was released in collaboration with Stephen Sprouse, the first of many to “deface” the timeless Louis Vuitton monogram logo.

その後、村上隆とのコラボレーションは12年間続いた。マーク・ジェイコブスの退任で販売終了したが、今でもリセールバリューが高いコレクションになっている。コラボについては、このnoteにも書いている。

原宿JINGで開催されているルイ・ヴィトンのアーカイブ展とも言える展覧会を見てきた。

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ブランドのレガシーと、現代アートとのコラボレーション、アーカイブとのコラボレーションは、美的感覚のアップデートあるいは、ブランド強化のための印象の強化を行っているように見えた。

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消費者は、アートにも、ブランドにも一体感を求めている。所有することで、その中に入れるということ。

こうした九象限を見せられると、モノグラムは何にでもなれる。そうした自由さがあると言えるのかもしれない。

完成したデザインというのは、もはや錯覚なのだろうか。以前、モノグラムのバッグについて、あれは完成されたデザインであり、もう手の入れようが無いということを聞いたことがある。

他者へのアピールのためのファッション、そうした意識は弱くなってきたというが、日本の若者のハイ・ブランドへの支持は、未だに厚い。


パート2は、ハイ・ファッションとサステナビリティの話題へ。表題には、ステラ・マッカートニーが取り上げられている。

地球で二番目に環境負荷をかけているファッション・アパレル産業、エシカルでないブランドを消費者が選ばなくなってきた。日本では、そうした機運は、まだ弱いと感じるが、欧州では既に組み込まれている。

”倫理的にラグジュアリー”や、グリーンウォッシングについては、次のnoteに書いた。矛盾のあるコピーとして批判を受けたとしても、業界全体というか、世界はそちらに向かっている。

副業のファッション・アパレルの商社向けコンサルティングでも、エシカル、サスティナブルの話題は、毎回議論している。教えてもらうことも多い。

ファスト・ファッションの消費者ニーズ主導の大量消費、その事に対する批判から始まる。ハイ・ファッションがブランドの希少性を保つために売れ残りを焼却すると紹介しているが、ミドルのブランドも同じことをしている。ただ日本の百貨店ブランドあたりの場合は現金化を限りなく模索した後で、融解処理だったり焼却したりしている。

ただ、2020年の状況は違った。このあたりの話は、小島先生の本に詳しい。

エシカルと言えばステラ・マッカートニー、アーティストとのコラボレーションとエシカルを統合した。エシカルというキーワードで思い浮かべるブランドとして確固たるマインドシェアを獲得している。

As an animal rights activist, a pioneer in ethical fashion, and a longtime artist collaborator, with a wide variety of artists and mediums, Stella McCartney recently merged her label’s two defining characteristics, a sustainable brand message and an affinity for artist collaborations, into one.

サスティナビリティとアートがエド・ルシェのスタイルによって統合した。それは、ファッション、アート、環境意識の高い人の関心をブランドに向けることに成功したことになる。

Sustainability and artistry ceased to be disjointed two years later when Ed Ruscha came on board to do the Winter 2016 ad campaign. In typical Ruscha style, vibrant visuals with text overlays, two components of his Pop Art persona, the ad campaign garnered attention from fashion, art, and environmentally conscious people.

こうした活動は、McCartney A to Z Manifestoに帰結した。

アルファベットの頭文字毎にコラボするアーティストを設定し、メッセージを打ち出している。コラボしたアーティストは、それぞれのアルファベットを視覚化し、新たな作品として提示する。ブランドのルックもそれに並列される。また、アーティストとブランドが共同でデザインしたオーガニックなTシャツは、収益の50%を寄付に回すという。よくあるチャリティーの構図であるが、それとは違った特別感を演出するのが、さすがはハイ・ブランドだろうか。


パート3は、コラボレーションの現在地点。コレクションでの重要性についてまとめている。

2010年代、情報の時代は個人の発信を強化し、多様な表現の世界を生み出した。派手さを増したとあるが、これはInstagramの影響もある。それをうまく活用したのがGUCCIであり、BALENCIAGAだろう。

ディオールがアーティストとのコラボレーションを推進していると指摘している。ラフ・シモンズが手掛けたコラボレーション、スターリング・ルビーが出発点らしい。

アーカイブについて整理したのは、こうしたブランドの態度を言葉として整理したかったから。


ディオールのバッグは、アートバーゼルで発表された。このことは、レオナルド・ダ・ヴィンチの新たに発見された作品が、現代アートのオークションに出されたことと同じ思惑を感じずにはいられない。


LADY DIORのシリーズは、実に多彩で多様なアーティストとコラボレーションしている。それは、ブランドのD&I(多様性)を訴えるには、これ以上ないメッセージのように思える。

Among the others in the diverse group of multifaceted feminist artists: Indian-English mixed media artist Bharti Kher, Canadian-Puerto Rican sculptor Gisela Colón, Franco-Swiss-Vietnamese performing and visual artist Mai-Thu Perret, French painter Claire Tabouret, and Malaysian-Swiss painter Olga Titus. While there were certainly male artists in the installment, they too were a diverse group, both culturally and in practice. From Malagasy abstractionist Joël Andrianomearisoa, to Chinese installation artist Song Dong, South African sculptor Chris Soal, and the Russian conceptual art duo Recycle Group, consisting of Andrey Blokhin and Georgy Kuznetsov.

人名の日本語読み(カタカナ)は間違ったらいけないので、そのまま引用、国籍、多様性という言い方そのものが陳腐な感じがするような、そうしたコラボレーションを見せている。あるいは互いに包摂している。

ディオールとアートのコラボレーションといえば、DIOR DOIGを連想する。


最早ファッションとアートのコラボレーションは組み込まれているとして、この特集は終わった。



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