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学ぶためのスタートライン

現代アートを学び始めて、怒涛のような時間が到来する。
修士課程の一年目、アートの基礎鍛錬を付ける精読が待っていた。
社会人向けの大学院、時間をやりくりしながら学ぶ必要がある。

圧倒的に基礎知識が足りないため、精読した書籍は三冊。全部合わせると千ページを超える。

・ゴンブリッチの美術の物語
・ゴドフリーのコンセプチュアル・アート
・後藤繁雄のアート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻


『美術の物語』が面白過ぎた。

もともと歴史以前の歴史が好きだった。
プレローマ、プレインカ、日本で言えば縄文時代か弥生時代。
エジプト、ギリシャの遺物には並々ならぬ関心があり、ウィーンの美術史美術館、ヴァチカン美術館のギリシャ館などは一日入り浸っていたことがある。
人類の出現とグレートジャーニーとか、そうしたものに興味があった。

『美術の物語』に戻る。ラスコー洞窟の壁画から始まり、ジャクソン・ポロックの抽象画までカバーしており、アヴァンギャルドについての記載で終わる。

エジプト人は知っているモノを描き
ギリシャ人は見ているモノを描いた

中世は感じたものを描く
見えているものではないモチーフと絵画表現。ある意味で、コンセプチュアル・アートじゃないか。なんて思った。(後からの学習でリアライズしてくのだけど、これが作品に魔術を込めていたことだったのだと思う)

そうした中でのルネサンス。エジプトからヘレニズム文化までの復活である。

時代は複雑性を増していく。

グーテンベルグの活版印刷の発明による文字の普及、アート作品のパトロンとなった教会は免罪符を大量に生産し、宗教革命に繋がり、一時的にアートは排斥されていく。ただ、根本的に人類はアートが好きなんだ。しぶとくも復活したアート。フランス革命、産業革命を経て印象派、近代へと連なっていく。

ハードコアという教授の指導だったが、むしろ楽しいジャーニーだった。言語化されていない歴史、それをなぞらえる『美術の物語』。まさにグレートジャーニー。ゴンブリッチの次に連なる物語を読みたかった。


次に手に取ったのが『コンセプチュアル・アート』。
辞書のような『美術の物語』のボリュームに怖気づいて、当初は、こちらから読み始めたのだけど、最初の数ページで挫折してしまった。
コンピューター関係の技術書だったら、難解でも読み解くのだけどね。
何しろ言葉の意味が分からないのと、特殊な使いまわしに理解ができなかった。


現代アートへの転換。作品と鑑賞者の関係の変化、おぼろげながらに解釈した。

作品 -> 鑑賞者

だったのが、

鑑賞者 -> 作品

という矢印に変わったように思う。
なんの矢印?
これがきちんと説明できるようになったら、MFAを取得できていると思われる。

現代アートには問いかけ、余白があり、鑑賞者が作品と向き合って作品との対話によってアートになる。視覚、網膜的な刺激から、思考的な刺激へ転換した。現代アートは問いかけと解釈の知能ゲームになった。

ここまできて、アート戦略に戻ってくる。
実は、既に2回通読していた。3回目は精読。

なんと読みやすいことか。


頭で分かったつもりになっているだけでなく、現代アートを感じる、あるいは楽しむということが、次の課題。



いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。