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抽象と写実

抽象世界

国立国際美術館の抽象世界。6月の大阪でサミットが開催されるタイミングで鑑賞した。警備の人たちは、すべての路地に配置されるのだと分かった。また、大阪の人たちのおもてなし、というか、そうした歓待のエピソードが面白かった。

6月というと、まだまだ現代アートがわかっていなかった時、ともかくスクーリングで話題に上がった展覧会は見ておこうと考えていた。

抽象画は、ともかくよくわからない。どう見ればいいのだろうか。

展示室すぐのエルズワース・ケリーの「黒い斜めのレリーフ」は、作品の大きさと吸い込まれるような黒が印象的だった。スターリング・ルビーの暗いながらも華やかな作品、トマ・アブツの幾何学的な作品など、全く分からない。その頃は...。

今見たら、クリストファー・ウールの文字で埋め尽くした画面とか、ウーゴ・ロンディノーネのブロック塀の作品とか、何かしらの解釈ができるのかもしれない。

これはまずいと思い、作品集を買った。作品解説も掲載されていたので、復習するつもり。

同時開催していたジャコメッティの展覧会、同じチケットで入れた。

白髪一雄の「天雄星 豹子頭」が良かった。白髪は、大学院に入学してからも何点か見ていたが、この作品が一番だと思った。抽象画なのだけど、立体的な絵の具が、絵画なのか彫刻なのか、そうした鑑賞者への介入を試みているような感じがした。山崎つる子の「Work」を凝視していると、顔が見えてきたり、他の形が見えてくる。不思議だな。

鑑賞したのは、3日後。作品の隣に冥福を祈るメッセージが掲載されていた。

ジャコメッティ

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この作品を収集した記念としての展覧会。ヤナイハラをモチーフに、いろいろな作品が提示されている。作品を通じて、ジャコメッティの矢内原への愛を感じる。

数奇景/NEW VIEW 日本を継ぐ,現代アートのいま

同じ時期に阪急うめだギャラリーで開催されていた現代アートの展覧会。友の会会員だったら無料なんだけど、東京在住なので、阪急には縁がない。

キラキラとした作品が並ぶ。

僕のこの時点では、この作品群については、見た目の綺麗さに感心がいった。

チームラボは一緒に仕事をしたことがあるので馴染みがある。こうしたところからアートへの関心に接続していくのだろうな、なんて思う。

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同じフロアで開催されていた関西周辺の芸大の作品展、販売もされていて、アーティストも自分の作品の近くにいる。作品について若手アーティストから直接聞くことができる。購入したいと思う作品は、既に完売だったけれど、アーティストとの交流は、とても刺激的なものだった。

スペインの現代写実絵画 バルセロナ・ヨーロッパ近代美術館(MEAM)コレクション

ゼミ生が集まる学習会を不定期に持っている。定まりのない現代アートを研究しているため、ゼミ生それぞれで研究テーマが、大きく異なる。

この学習会の日に、絵画コースのスクーリングでデッサンをやっていた。アーティストで最年長の同級生が、「今から、ああいう技術の習得に意味があるか」という問いかけを投げかけていた。現代アートだけがアートではないだろうと思いつつも、その同級生に「写実のホキ美術館についてどう思う?」と問いかけてみた。強面の顔をほころばせて「見にいきたいんだよねぇ」と話す。みんなアートが好きなんだね。

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千葉県緑区のホキ美術館、記念公園の傍にあるが周囲は住宅街。美術館があるためか、周辺の家屋は街並みを意識しながらも、それぞれの家の個性を主張しているように感じる。美術館をシンボルとした街並みができている。

ホキ美術館のコレクションから始まる展示、日本人アーティストによる写実の絵画が展示されており、写真と見間違えるような絵画が並ぶ。ここまでの写実であれば写真ではダメなのだろうかと感じてしまう。絵画のモチーフというよりは技巧を見せるためのものなのかとも感じる。

絵のモチーフをみているのか、技術をみているのか、そのバッググラウンドに思いをはせるのか。

絵を見る立ち位置により、パチンと写真のように見える距離がある。近づけば筆の痕跡が見え、写真とは違うと明らかに分かる。それが離れると写真ではないかと感じる。考えてみれば写真も、究極近づいていくと色の点である。それを網膜や脳が、その情景を見ているかのように処理している。そうした観点から、写実とは、むしろ、網膜、脳内処理の誤用を狙っているのか...。

写実で、ありえないモチーフを描く。デジタルでコラージュできるが、写真とは違った写真の表現、画家が見ている情景を写実として実現する。デジタルカメラの絵作りに似ている作品もあり、作品の年代から推察するに、デジカメの絵作りを画家のタッチを参考にしたように感じた。

スペインの若い画家は写実に新たなテーマを見出しているようだけど、日本人は写実に対してストイックな印象を受けた。

AI、機械学習の進化は自動生成、ディープフェイクも誕生させている。そのときに写実の役割はどうなるのだろうか。ミュージアムショップには、写実道を探求するかのような言葉を掲げたアーティストの作品集が並んでいた。

いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。