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CG × ファッション CGWORLD 4月号の第二特集

CGWORLD の第二特集のCG × ファッション特集。昔は、CGの世界とファッションの世界は、完全に分断されていたけれど、昨今のグラフィック性能の向上とCGの活用範囲の拡大によって、リアリティが求められる。その結果なのか、現実の服作りにおいて、3Dデザインが浸透(侵食の方がイメージが近い)してきた。

3D を使ったデザイン。1990年代に自動車産業が、3D CADの導入を始めた。僕の本業で、そのCADデータを効率的に利用するためのシステム作りに携わり、当時としては最先端のコンピューター技術を経験することができた。当時の日本としては、片手くらいしか技術者がおらず、故に価格も高いコンピューターだった。その結果、もっと安い仕組みで代替されてしまった。いろいろなことを学ぶことができたと思う。

CGWORLDの4月号、これまでもVTuberのファッションなどの特集はあったけれど、それはCGの中で閉じるファッションの話だった。今回の特集では、3つの記事が掲載されている。

ひとつめの記事は、山口壮大氏によるもの。

3Dプリンタの低価格化が、ファッション業界にデータと出力(物質)との紐づけという概念を持ち込ませた。ただし、当初の出力は耐性がないものであり、Try & Errorが行われたとしている。

IRIS VAN HERPEN が、3Dプリンタを使って服を作ったという話題は、昨年のWWFFで聞いた。ファッション・デザイナーのみならず、建築家もプロジェクトに参加したという。

ファッション業界への3D CGデザインは、百花繚乱、記事の中では、
Designer、CLO、CREACOMPOの3点に触れられていたけれど、この他にも沢山でてきた。Tommy Hilfiger は、2022年から3D デザインに移行するという。恐らくLi & Fung の存在も大きいと思う。

UNIQLOでも3Dモデリストの採用が行われるなど、ファッション業界にもコンピュータ・スキルが求められるようになるのでしょう。デザインから生産におけるCGの活用と普及は、避けられない流れ。

小売の現場でも、UTやNIKEの事例にあるようにCGを使うことでカスタマイズができる。ヨーロッパのとあるニットメーカーは、Web上で模様を好きなようにカスタマイズすると、その通りに編み上げた製品を届けてくれる。

現実世界にデータが混在する現代に対して、実在・非実在の議論は意味を成さなくなっていくでしょう。(P.51)

コロナ禍によるアート・ワールドのオンライン化の流れを追っていたけれど、ファッション業界にもそれはあって、本誌では触れられていなかったけれど、VRによるショーの開催は、より現実的になったと思う。

葵プリズムや、imma のように、日本でも既にバーチャル・ヒューマンのインフルエンサーは活躍している。


saya の出現当初は、びっくりした。

こうした3D CGを生成することのできる環境が、それほど高くなく手に入るようになった世界。1990年代には、想像もできなかった。

だって1998年に誕生したテライユキが、2000年にCMに出たことで驚いていたのだから。


CGWORLD なので、ツールも紹介されていた。

VRoid

STYLY

5Gの到来で可能になる3Dホログラムや、皮膚感覚フィードバックを得られるハプティクスなど、技術の躍進によりマテリアルとデータの境界はより曖昧になっていきます。美意識を内在するファッションイメージと、物質である身体や衣服とが切り離されたときに初めて、新たなファッションデザインがスタートするのかもしれません。(P.51)

10年後もしくは20年以内だろうか。恐らく自身の服にテクスチャ・マッピングできるようになり、ハイ・ブランドは、そうしたテクスチャー・データを売るようになるのではないだろうか。そうしたファッションに身を包んだ自身は、現実世界と仮想世界を自由に行き来する。僕は、こんな未来を想像している。


二つ目の記事は、chloma というファッションレーベルの鈴木淳哉氏によるテキストと実践例を示している。

Marvelous Designer によって、ゲームの世界と現実の世界が地続きになった感覚を持ったという。この3D デザイン・ツールは、パタンナーの知識があれば、服のデザインを作れるという。そして、実際にリアルで、服の縫製を行うことは減っていき、CGの世界で、そうした試作を行っていくだろう。と。

これはかなり現実的で、僕は副業でアパレル・ビジネスのコンサルティングを行っているが、そこではデジタル・プラットフォームの構築、企画からサンプルまでをCGで完結させるには、どうするか?そうした課題に対する取り組みをクライアントと一緒に検討している。ひょっとしたら、日本のアパレル・ビジネスのゲーム・チェンジができるんじゃないだろうか。

3D CGで縫製をして、バーチャル・モデルに着せて、自社のページとSNSで発表する。反応によって生産を行う。サスティナブルな服作り。いずれ、欧州のハイ・ブランドも参入してくるものと思う。


最後の記事は、開発中のコンテンツ『HERA』について。VR を利用して人生の追体験ができるというコンセプトの作品らしい。デジタルヒューマンとVRとの組み合わせにより実現する。もう、実現しているのではないの?なんて声も聞こえてきそうだけど、コンピュータ業界に携わっていると、まだ性能が追い付いていないよ、と冷静になってしまう。とはいえ、ハードウェアの性能を待ってソフトウェア(コンテンツ)を作るのではなく、両方の競争によってコンピュータの性能が向上してきた。こうした取り組みに対して、まだ早いというのは、そうした技術発展の歴史を知らないということになる。

VR とバーチャル・ヒューマンリアリティを持たせるために、実際の服を着てみて、スタイリストが40年後の世界を想像してデザインするということ。細部にこだわらなければ、VR がチープになってしまう。こうした拘りは、コンテンツ作りに携わる人なら当然だろうけど、こうした拘りからのリクエストが、ソフトウェア、ハードウェアを発展させていく。

アイ・トラッキングを使い、AIによるストーリー分岐まで行うということ。

もはや、映画とゲームの境界は溶けてしまったような気がする。









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