『PUBLIC DEVICE』@東京藝大 鑑賞メモ
年末のとあるアートな一日。
渋谷のOILで陶器市を見てDIEGOの小作品を買い、GYRE で名和晃平を見てからMAKIの展覧会を見る。MAKIで展示されていた絵画は西海岸を思わせるが、なんだか暗いイメージ、ファーガス・マカフリーでマシュー・バーニー、キャロリー・シュニーマン、白髪一雄、田中泯の作品を見る。田中の作品はブラウン管テレビ(今の時代によく見つけてきたと思う)で上映されており、あの解像度の低い独特の雰囲気が彼のパフォーマンスを不思議なものにしていた。15分くらいの映像、見入っていた。
ここまで来たらワタリウムにも寄っておこう。地下の書店にギャラリースペースができていて、そこで名もなき実昌の個展を開催していた。作品鑑賞と話好きにより、すっかり時間を食ってしまった。DIEGOのハコは、まだ店頭に並んでいたな。
ここまでを14時くらいまでにこなすつもりが、既に16時近く。この日は藝大のPUBLIC DEVICEも見たかった。『生きている東京展』は、向いに設置されている作品だけを見て、上野に移動する。
この展覧会は何で知ったのだったっけ。
協力した佐賀の展覧会、その流れで佐賀大学の大学院生から熊本で開催された公共彫刻のワークショップの話を聞いた。それまで憚られていた裸婦像が、あるきっかけによって全国に広がったという話などを聞いた。そういうムーブメントもあるのだなと、その時は思っていたけれど一度認識すると身の回りに関連することがいろいろとあることに気がつく。これをバーダー・マインホフ現象と呼ぶ。
もはや、アートに対する眼差しは変えることはできないね。
到着した。
5mはあるだろうか。巨大な女子高生のような制服(プリーツのあるスカートとセーターのようなトップスがそう判断させる。)を着た真白の彫刻が目に入った。
ここだ。
顔には無数の星型があり、タバコのようなものを持っているように見えた。その巨大さは、少し遠くからじゃないと全容が見えないものの、狭い空間なので、そこまで引いてみることができない。そうしたアンバランスさの中に緊張感があるような、そんな出迎えを受けた。
彫像の真下で見上げると、スカートの中を覗くような感覚になり、それが背徳感を呼び起こす。そうした自分毎として問題提示するから、自分に起こる問題となり、翻ってパブリック・デバイスとは何か、反芻することになる。
そうした洗礼を受けてか、キャンパスに提示された作品群、微妙に藝大に介入された展覧会は、どことなく見る方に緊張感を強いるような感じもした。
メイン会場の陳列館。学生が番をしているのでしょう、どこか、ぎこちなくパンフレットを渡してくれた。
公共彫刻、アートとはプライベートなものだろう、それが公共とはどういうことか、会田誠の言葉が様々なレイヤーとして感情を波たたせたように思う。国会議事堂を指差す迫力のあるガシャドクロの彫刻、彫刻というにはあまりにも脆い様子、いや、それがむしろ力強さを示していた。
この日“名もなき〜”という言葉に二箇所で出会った。
彫刻とは何だろうか。ミュンスター彫刻プロジェクトにヒントがありそうだ。
「美術の物語」は絵画に関しての言及に力点があったと思う。修論の提出も終わったので、彫刻という視点から再読してみようと思う。
大石膏室に移動する。広いキャンパスで迷子になりながら。
巨大な空間に石膏像が立ち並ぶ。世界の美術館が集結したような豪華さがあった。そこに巨大なバルーン。柔らかな彫刻か。
入り口にある映像作品、マネキンが近代彫刻の写実の座を奪った。あるいは引き継いだとしてマネキン製造の会社にリサーチとして半年間滞在し、マネキンの製造工程、再加工の工程を映像作品とした。この映像がこの部屋で提示されていることの意味をどう解釈すればよいか。
日本のキャラクターフィギュアは、海外向けの輸出品でもある。輸出額などの観点から見れば小さなものだが、文化の観点から見ればどうだろうか。
ねんどろいどを販売するGOOD SMILE COMPANYは、海外向けの販売を重視しているし、海外から注文が入っている。こうしたメーカーの直販は、海賊版もしくは無許可の転売サイトによるブランド価値毀損を防止する役割を持つ。
ちなみに副業では、こうしたブランドコミュニケーションなんかも支援している。
理想の体型を追求するあまりフィクションになってしまったマネキン、それに追随するかのようなファッション・モデル、もはや通常サイズのモデルを使うという運動が正当化されるまでになっている。
GUは200人の平均値のサイズを持つバーチャル・モデルを登場させた。
ARによって都市に仮想的な彫刻が出現する今日、彫刻とは何か、新たなイノベーションが起こる素地が整った。
4月に発売される図録、ネットショップで注文しておいた。
いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。