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アーティストのグローバル進出「Ayako Rokkaku’s Transformation from Regional Sensation to Global Art Market Star」を読んだメモ

Artsyのテキストでロッカクアヤコがグローバルへ進出・展開したことが整理されていた。

7メートルのキャンバスに素手で描き出すカラフルなイメージ、夢のようなファンタジーの世界であり、アートマーケットを魅了してきた。ライブパフォーマンスとして作品を仕上げていく様子などを取り上げ、日本を代表する中堅アーティストと紹介している。

アニメ風のキャラクターがよりファンタジーを強化しているのかもしれない。美術館、ギャラリー、コレクターが注目しているという。

Phillips のアソシエイト・スペシャリストであり、香港の20世紀・現代美術デイセールスの責任者であるダニエル・ソーは、「彼女の虹色の世界観と、個性的な女性像を中心としたアイコニックなスタイルは、彼女の市場拡大の原動力となっています」と語ります。「彼女は独自のビジュアルボキャブラリーを持っていますが、それは日本の "カワイイ "という概念にも当てはまります。大きな目をしたキャラクターの背景には、花や小さな人物などの緻密なディテールが詰まった色鮮やかな背景が使われています。」
“Her easily recognisable rainbow-world aesthetic and iconic style featuring mostly female figures full of character is the driving force behind her growing market,” said Danielle So, a Phillips associate specialist and head of the firm’s 20th-century and contemporary art day sales in Hong Kong. “She creates a visual vocabulary that is unique to her yet fits within the Japanese kawaii (cute) canon with vividly colored backgrounds full of intricate details of flowers and tiny figures as the backdrop for her large-eyed characters.”

Artsyのテキストでは、彼女のキャリアは、村上隆のGEISAIでイラストレーション賞を受賞してから始まると説明されていた。(Wikiによればスカウト賞?)また、2006年に後藤明男賞を受賞したとある。彼女のダンボールに描かれた作品は、サイズに応じて3000円から1万円で販売されていた。その作品の一部は、Emmanuel Perrotin(PERROTINのオーナー)が購入したという。


六角は「芸祭」に参加したことで、組織的に認知され、主要な市場に進出した。
Rokkaku’s inclusion in Geisai gave her institutional recognition and launched her primary market forward.

僕の研究テーマのひとつは、デジタルにシフトした世界での関係性の構築、いかにデジタル空間の中で発見し、コネクトしていくのか。

芸祭を経て露出したロッカクアヤコは、2007年にアムステルダムで2回目の個展を開催した。これにより、カラーを主体としたアーティスト(Sam Francis, Niki de Saint Phalle, Walasse Ting, and Karel Appel)と並んで語られるようになったという。

The representation placed Rokkaku on a roster alongside established artists whose repertoire is steeped in color, including Sam Francis, Niki de Saint Phalle, Walasse Ting, and Karel Appel.

オランダのギャラリストにロッカクアヤコを紹介したのは村上隆、ギャラリストは、彼女の描き方に魅了されたという。

“He was captivated by the colorful works and her original technique of applying paint to the medium with her bare hands.”

素手(bare hands)で描く、カラフルな世界、身体性でもあるし、精神性でもある。そのパワーが、見る人を魅了させるのだろう。2007年の展覧会は、デンマーク、ドイツ、日本、オランダ、イタリアを回った。ワールドツアーの様相だ。

ロッカクアヤコの作品はダンボール、ウール、レイヤード・アセテートや、アンティークのルイ・ヴィトンのスーツケースにまで及ぶ。人生の楽しみと不条理をビジュアルランゲージとして表している。


小さな頃から落書きが好きだった。ただし、絵を本格的に描きはじめたのは20歳頃、1982年生まれ、GEISAIで賞を取る2年くらい前から絵を描き始めたということだろうか。

前出のPhillipsのダニエル・ソーは、ロッカクの作品は絵画に対する身体的なアプローチにあるという。

2018年にロッカクのパフォーマンスを目の当たりにする機会があったソーは、彼女が絵に完全に身を委ねる姿を見て、その体験が鑑賞者に「強い印象」を与えたと語っています。
Having had the opportunity to witness a Rokkaku performance in 2018, So said the experience leaves “a strong impression” on the viewer as they watch her fully surrender to the painting.

このライブパフォーマンスは、アーティストの世界の表現であり、パフォーマンスを共に作り上げる鑑賞者に解釈の拡がりを与えるものであり、こうした共有が、アーティストへの強い支持へと繋がる。これは、村上隆や奈良美智とは違ったエッジを作り上げている。

先のギャラリーでの個展は、二次マーケットでの認知へと続く。2007年のシンワオークションで、2006年のダンボールの作品が20万円で出品され、52万円で落札された。

オランダとスロバキアの美術館での個展、オランダの美術館では、展示期間中に3週間、スタジオとして新作を制作し、その様子を配信したという。

2018年のPhillipsの販売展では初日に全ての作品が売れてしまったという。オークションでも落札価格35万米ドルから41万米ドルで落札されている。ソーは、投機的な買いではないと指摘していた。そして、その需要は年々高まっているとも。そして、オークションレコードは、その後も更新されていき、60万米ドルを超える落札価格になった。こうした需要の高まりの先行指標としてArtsyの問合せを引き合いに出している。Artsyにロッカクが掲載されたのが2017年、2020年には前年の3倍の問合せがあったという。2021年の問合せも前年を超える勢いだという。

ロッカクの作品はアジアのコレクターが買っているが、その他の国からも需要がある。オランダのギャラリーや、美術館のことを考えると、欧州での人気も伺える。既存のコレクターと新しくコレクションを始めるコレクターの両方に人気があり、需要に供給が追い付いていないとしている。

オランダベースのギャラリストの言葉は、ギャラリーのマネージメントの大切さを教えてくれる。

「多くのアートファンがロッカクの作品を受け入れているのは素晴らしいことですが、ギャラリーとしては、アートを愛するコレクターと、手っ取り早く利益を得ようとするフリッパーを分けるのも私たちの仕事です」
“It’s great to see so many art lovers embracing Rokkaku’s work, but for us as a gallery it is also our job to separate the art-loving collector from the flippers looking for a fast profit,”

そして、ギャラリストは、世界規模の展覧会を開催することと、彼女の作品をパブリックコレクションに収めていくことをゴールと主張していた。

こうした日本のアーティストのテキストをArtsyのエディターが書いている。もちろん、Artsyへの注目度を上げるために、勢いのあるアーティストを取り上げるだろうけれど、日本からも、こうした発信をしたいものである。



アート・フェアで賞を取り、アート・マーケットに繋がる道をつけた。そしてトップアーティストの村上隆のコネクションから、認知が広がる。そうしてブーストされた後は、アーティストの個性、特徴とも言えるが、そうしたことが現代のアートファンに受け入れられる。展覧会が世界を回り、美術館に作品が所蔵される。そうしてファンが増えていき、セカンダリ・マーケットに作品が出るようになる。

こうしたことをモデル化して成功モデルとして分析することに、さしたる意味は無いと思う。ただ、最近気が付いたのは、もっとメタ化して考えると、共通する何かがあるだろうということ。





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