マガジンのカバー画像

現代アート研究

220
現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
運営しているクリエイター

#展覧会

Pierre Huyghe Liminal

5月のはじめ、ピエール・ユイグ(Pierre・Huyghe)の大規模な個展「Liminal」をベネチアのPunta della Doganaで見てきた。ここでは展覧会を見たメモを残しておきたい。 ピエール・ユイグは展覧会の開始にあたって、そこが始まりと言う。多くのアーティストは作品制作を終えてから展覧会の初日を迎えるが、自分はそうではないという。 つまり、ピエール・ユイグの作品は展覧会が始まったタイミングで固定されているものではなく、会期中にも変化していく、どのタイミング

Other Rooms

6/1から19日まで開催されていた『Other Rooms』を鑑賞してきた。 予約をして、1時間30分枠を一人で鑑賞するという展覧会、狩野志歩、橋本晶子の作品が提示されている部屋に案内され、そこで一人で鑑賞をするというもの。部屋の場所は非公開であり、当日受付をするまで、どこに連れていかれるのか、どのような場所なのか想像するしかない。 意外な場所に案内された。 誰かが住んでいたスペースであるが、生活感はなく、痕跡だけがある。ベッドと机、ミニキッチンに椅子が二つ配置されてい

岡崎と名古屋、現代写真アートを巡る旅 『現代フォトアートは変成する』 鑑賞メモ

最寄りの東岡崎駅からギャラリーまでは徒歩圏内、岡崎には少し馴染みがあった。前職で岡崎の自動車製造業向けのとある領域の情報システム構築プロジェクトに携わっており、岡崎へは3年程通った。大変なプロジェクトだったのと、ネガティブなことが多かったためか、この土地にあまりいい印象は持っていなかった。ホテルとプロジェクトルームの往復生活だったこともあり、そこまで馴染みのある土地ではないが、縁はあった。 駅から目的のギャラリーに到着するまでに川を渡る必要がある。橋を渡るために迂回だが、は

根本彰『アーカイブの思想 言葉を知に変える仕組み』読書メモ

アーカイブというのは知を活かすための仕組みである。 アーカイブとは、ドキュメント(文書)を保管し、後世も含む他者へ知識を伝搬することである。ドキュメントあるいは文書は、他者に知識を移転するための仕組み、記録はドキュメントとは区別される。 日本で図書館の役割が受け入れられておらず、司書という職業が確立されていないのは、知を蓄積して活かすという考え方が十分に理解されていないからではないかと思わざるをえません。(P.10) 文書(あるいはドキュメント)の役割が希薄になったとき

『エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク』@東京都写真美術館 鑑賞メモ

エキソニモの回顧展が開催されることを知った。WAITINGROOMの展示でも、あいちトリエンナーレの展示でも、ちょこちょこ出会うアーティストなので、記憶に残っていた。最近ではCADANの新しいギャラリーで見かけた。 あいトリに展示されていたキスが、2階の売店前に設置されていた。今見ると、ロックダウンの中でのコミュニケーションを暗喩しているようにも見える。 過去の作品を含め、多くの作品が展示されている。写真の他に、動画も撮影可能という。 情報技術に深いかかわりがあるが、そ

東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA @ PARCO MUSEUM TOKYO 鑑賞メモ

恥ずかしながら(?)、大学院に進学するまで蜷川実花なる人物を知らなかった。まぁ、どんなに有名人であっても知らない人は知らない。世の中、そんな感じでいいと思っている。現代アートを研究するようになって、個人の仕事に注目するようになった。最近はアーティスト・コレクティブもあるけれど、個人の名前で勝負しているというのは変わらないと思う。 6月から営業再開した渋谷パルコ。泉水さんの話を聞いたのは今年のことだった。そういえば、その話をnoteに書くのを忘れていた。さて、500枚の写真を