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現代アート研究

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現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
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#読書メモ

マット・アルト 『新ジャポニズム産業史1945-2020』 読書メモ

本書は世界に浸透したジャポニズムについてアメリカ人の視点でまとめている。ただ、各国語に翻訳されて好調なセールスを見せていることからアメリカに限定された話ではないらしい。 日本の存在はファンタジーである。そんな国は想像の中にしかない。オスカー・ワイルドの詩を引用しながら始まる。 西欧とアメリカで起こったジャポニズムをファンタジーであるという。日本の開国によって文化が交流し、それまで見たこともなかった品物が西洋にやってきた。東洋趣味として括られずに、ジャポニズムとして取り上げ

レイ・ブラッドベリ『華氏451度』 読書メモ

思索の深いところまで辿り着けないようにする。国家あるいは社会が、そのように判断した時に本を燃やす。 華氏451度とは、本が燃える温度という。 大衆に考えさせることを放棄させた世界、考えさせないように、人と人との対話ではなく、即興的な刹那的な情報消費をさせる。それでも考える人は出てくる。そうした人を次の世代までつなげないようにするためか、考えさせないような社会になっていた。防火技術の進展によって火事がなくなった世界、本を焼く昇火士という職業がある。今の世界の消防士とは逆の役

週刊東洋経済のアート特集

少し前に発売された週刊東洋経済のアートマーケット特集にようやく向き合った。読書メモというよりも、何が書いてあって、それに対して、どのように考えたのかテキストを残しておきたい。(Amazonの表紙画像と実際の雑誌の表紙が違う。手元の雑誌の表紙の一部はヘッダー画像にしている。) アートマーケットが熱い。それを過熱気味としてバブルではないかと指摘する旨の記事もあった。バブルというのは映画『アートのお値段』でも指摘されていた。バブルという指摘も状況を表しているかもしれないが、錬金術

フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 読書メモ(微ネタバレ)

今更ながらに読んでみた。ブレードランナーの原作小説。1977年発行の文庫本のバージョン、元々は1969年に単行本として出版されていた。日本での書籍発表の当時は、著者の名前を知る人が少なかったと綴っていたが、映画ブレードランナーの公開によって一転大人気となった。 映画は見たような、見てないような、記憶にない。小説とは少し違っているらしい。 2016年の7月の74刷を読んだ。 地球に人が住めなくなるような大戦後の世界、どういった経緯かは不明となってしまったが、誰かが核ミサイ