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漫画を描く上で絶対こうしたかった所と敢えて入れなかった所

こんちは。2月に出版されました「死にかけた僕はまだ芸人を辞めていない」絶賛発売中も発売中です。

1話から7話まではマガジンで無料で読めますので、気になった方は一先ず読んでみて下さい!

さて、今回は出版にあたり、、、というかこの漫画を描くにあたり絶対にこうしたいと決めていた所と敢えてこういうのは入れなかった所を自分で解説しようかと思います。

そもそも出版が決まった時点でクライマックスがどうなるかはプロットで書いていました。

なので、大幅なストーリーはそんなに迷わず描きたかったことが描けたと思います。

てなわけで、下の線から先は結構なネタバレになるかと思います。
これから漫画を読もうと思っている方は是非、漫画を読んでから見て下さい。気にしない方は全然スクロールしちゃってください。そっから気になったら漫画読んで下さい。
要は長めのあとがきです。
あとがきに書ききれなかったことを書いてます。


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まず

絶対にこうしたいと決めていた所は"最後まで特に大したことは起こらない"ことでした。

芸人が大きなテーマになっています。
読み進めていれば予想したかもしれませんが、例えば解散するだとか、お笑いを辞めるだとか逆に追い詰められて成功するパターンも展開としてはあり得る話です。
物語にはクライマックスがあってオチがあります。
ハリウッド映画のような早い展開でジェットコースターのようなストーリー、僕は大好きです。
でも、それをやらないことは決めていました。
つまらない話になってるかもしれません。
特に大したことが起こらないので。
ただ大したことが起こらないケースが1番共感性が高いと思っていました。
わざわざドラマが起こらないことを形にした行為に意味は生まれるんじゃないかと。

"ないこと"ことが有るを"ない状態"で気付かせたかったからです。
ちょっとわかりづらいですけど。
日記を毎日つけていて、「今日何があったかな?」と1日を振り返って、特別何かが起きなかったから「特になし昨日と同じ」と日記には書くかもしれません。
ですが、昨日と同じような1日を過ごせていることが特別で、その生活に慣れてそれが当たり前で土台になっているから変化がないことの異常さに気付いてない。
「毎日変わらずこんな生活を送っていることが、実は異常なんじゃないか?」
と思い始めたからです。だから、それを描きたかった。
ドラマチックな出来事が起こることが物語には必要だとわかってますが、元々が異常なら実はすでにドラマは起きている。
しかも、変化は少しずつ起きています。昨日より今日の方が少し髪は長いですし、昨日より今日の方が1日歳を取ってる。
日常という括りでは大きな変化というものはないかもしれません。

生活は相変わらずで、特に大きな変化がない。
日常が実は特別だということに気付くお話は見たことありますけど、それに気付くには日常から離れて、非日常を体験している時に何気ない毎日がいかに大切かを思い知るみたいな展開だと思います。
それを日常の中に居ながらにして気付くという展開を描きたかったんです。
つまり何も起こらない。
でも感情の変化はある。
“何も起こらない状況が有る“ことに主人公が気付く。
側から見れば、大したことは起こっていなくても主人公にとっては、出来事は起きていて大きな感情の変化があって一つの結論に達する。
それが出来ていたかは、わかりませんが、そういうのが描きたかったです。
実際、そういう風に描けてたんでしょうか?笑

『特に何も起こらなかった。だけど、だから主人公の人生はこれからも続く』ことを物語の終わりにしたかったんです。
シンデレラはガラスの靴がぴったりあって、王子様と幸せに暮らしました。
と言われてもどう暮らしたのかの想像が付かない。
『物語はここで終わるけど、登場人物の人生はこれからも続く』
ある人のちょっと生き方が変わった、とある期間という素朴なテーマが、あのようなラストになりました。

次に

敢えて入れなかった要素は、主人公のお笑い以外への関心です。
ストーリー自体は実体験を元に描いています。設定だったり物語の大半は自分の体験や身の回りの芸人のあるあるみたいなものを取り入れています。
ですが、主人公の千葉のモデルが自分だとするなら入れないといけない要素は、漫画を描くことに関心がある設定です。
自分の出来事をそのまんま描くなら、主人公は人命救助の出来事を漫画にするんです。僕がそうしてますから。
そうするとそもそも描こうとして話と大幅にストーリー展開がブレてしまうので、主人公が漫画を描くことに関心がある設定は入れませんでした。
執筆中、お笑いにもう一度正面から向き合おうとする千葉を描いている作者は漫画を描いているという状況に気が狂いそうになりました。
「これからお笑いもう一度頑張ろうとしてる芸人を描いている本人はお笑いやらずに漫画を描いている」
訳がわかりません。何をしてるんだオレは!って白目剥いて近所迷惑にならないように小さい声で「ぁぁぁぁぁぁ」って叫びました。
なので、この漫画の主人公のラストの感情も過去の自分がモデルになっています。
今の自分は、あの頃より少し考え方も変化しています。
この漫画を描いたこと自体が、この物語から想像ができない展開になったのかなと今更思います。


てな感じです。

結構、普段から思ってることやら考えてることを漫画という形で吐き出せたので、そこは考え甲斐があったなと思います。

また何か描こうと思います。

おやすみ!

夏ですね スイカでも食いたいもんですわね