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思い出の品々 その5

小さなランドセル

実家の天袋の整理に手を付けたら、段ボールに納められた鞄類が出て来た。

懐かしい。小学校時代に愛用していたランドセルだ。

我が子に買い与えた近年のものと機能性は変わらないように見えるが、決定的に違うのはそのサイズ。

小さい。兎に角。

保存していて水分が抜けて縮んだわけではないだろう。いくら皮革製品でもそんなに極端に縮みはしないものだ。

当時の子どもは今の子どもより小柄だったとか?

それも違うだろう。子どもの健康診査の結果推移を調べれば判るだろうけれど、そりゃあ確かに食生活やら何やらで子どもの体格は昔より大きくなっているとは思うが、近年のランドセルのサイズは寧ろ大きめ。1年生なんか個人差によってはランドセルが歩いているようにさえ見える。

じゃあ何故?なにゆえ?

思うに教科書やノートのサイズによるところが大きいのではないだろうか?

と言うか、他に理由は思いつかないし。

小学校の教科書やノート、プリント類がB5サイズ中心からA4サイズ中心へと変わったのは確か平成初期のことだった。

言い方を変えれば、21世紀になった頃と記憶している。

ただし、自分自身はその頃は教科書に馴染みが薄かったので、記憶の元になっているのは教科書ならず仕事で扱っていた文書のサイズだ。

役所関係から発出される文書類は昭和の時代はB版だった。日本生まれのB版は明治の昔から、いや起源はもっと古いらしいが、遠い昔から使われていたと聞く。

しかし、ビジネスシーンでは欧米サイズのA版が多かったようで、昭和から平成になった頃に、やっと役所関係の文書もA版化に移行したと記憶している。

それによって役所から届く封書も長4と角3から長3と角2に替わった。

教科書もその流れの中にあってB5中心からA4中心になったようだ。先生の作成するプリントも、その頃にB版からA版に替わったと思う。

併せて、教科書の内容が増えたり副教材が増えたり、通学時に子どもたちが持ち歩くもの、つまりランドセルに収納するものが増えたということもあって、ランドセルはその厚みも増したようだ。

それにしてもサイズの違うこと。パッと見には、今では容積的に倍ぐらいになったのではないかと思える程の変貌ぶりだ。

保存状態が良かったのか、皮の処理が優れているのか、湿気た段ボールから出て来たランドセルには黴ひとつ付着していない。

黒い染料が酸化(?)して、茶色っぽい粉を吹いているのが古さを感じさせる。

これを背負って6年間の小学校生活を送ったのだ。懐かしい。

保存してくれていた両親に感謝。

ちなみに、この中に納められ、幼かった背中で日々揺られていた教科書やノートも、押し入れの他の場所から見つけた。

もし自分が偉大な人物だったりしたら、教科書もノートもランドセルも何もかも、貴重な資料として引き続き保存し続けられるのだろう。

されど、残念ながら私は普通の人。いずれは収納する場所もなくなるであろうことを考えれば、今このタイミングで処分するしかないだろう。

自分亡き後、子どもたちに託すことではない。そりゃ迷惑だ。

なので、教科書とノートは処分した。

日記や作文など、捨てるに捨てられないものは別の箱に取り敢えずは残したけれど。

さて、ランドセルはどうしたものか。

暫く悩むことになるなぁ…

中学生の定番

実家の天袋でランドセルを見つけた時、同じ段ボール箱に帆布素材の通学バッグも入っていた。

名前が書いてあるので自分のものではない。兄のものだ。自分のはどこにしまってあるのだろうか?

それとも既に処分済みか?

いずれにしても懐かしい。

当時は、中学生になると私服から制服に出で立ちが変わり、男子は鞄もランドセルからこの帆布バッグ、またの名を「ズックかばん」に持ち替えた。

そういう決め事だったのだ。

ストラップの調整幅が狭かったのか、はたまた今とは流行りが違っていたのか、やや長めのストラップで腰より下、尻の上で弾ませながら皆通学していた。

作りは所謂メッセンジャーバッグの作りなので、今時であれば短めに調整して胸の前に装着している方が自然だ。

教室に着くと、ランドセルと違ってストラップを机の横側に掛けてぶら下げられるのが便利だった。

ただし、ストラップの机に掛かっている部分には、ボールペンとかで落書きをしてしまいがちだったけれど。

鞄の中に仕切りとかはなく底板もないので、ランドセルに比べて教科書やノートがスッキリ納められないのが最大の欠点だった気がする。

中学生の頃は、教科書やノートを真面目に日々持ち帰っていたから。

給食がなかったから弁当も入れなければならなかったので尚更だ。

今時はもっと高機能の通学バッグやスポーツバッグで通学しているようだけれど、決め事というものは効果覿面であり、当時はそれが当たり前という感覚で何ら疑問もなく肩にストラップを食い込ませながら通学していた。

あ、思い出した。通学距離が長かったので自転車通学の許可を貰っていたんだっけ。

なので、肩に食い込ませていたのは雨の日だけだったと思う。

ランドセルにしても帆布バッグにしても、最近ではファッションとして重用される場面も多いようだけれど、流石にこの古いバッグを洗い直して使うのもどうかと思う。

ランドセル同様、どうしたものか…。

悩みが一つ増えた。