#戸主=男性という社会的表象

 特別定額給付金の給付が徐々に始まっている。この申請に際して、原則として家族全員分を「世帯主」が申請し、指定された口座に現金が振り込まれる。

 「世帯主」が差配することに疑問を感じる。現代でも、行政サービスにおいて「世帯主主義」を通していることはおかしい。

家制度について

 明治民法は、戸主を家の統率者とし、家が国家統合の単位とした。戸主は、家の統率者としての権限を持つため、同じ親族で親等が同じでも、長男か次男かで扱いは大きく違った。加えて、婚姻や養子縁組なども戸主の同意が必要だったため、家族が家を去るか否かにつき、戸主の意向が大きく左右された。

 家制度には家を統括する戸主の権限濫用により、家族の権利が犠牲にされる危険性があったため、戦後に制定された日本国憲法第24条等「家庭生活における個人の尊厳と両性の本質的平等」に反するとして廃止された。

未だに残る「戸主」システム

 憲法は「国民一人ひとり」を尊重するようになった。男女は平等であり、家族の中に「主」の存在は想定されていない。
 だが、世帯主に宛てた手紙を送付する行政サービスは未だに残っている。選挙の投票所の入場整理券は家族分まとめて世帯主宛に送られる。個人が主権者として臨む機会なのに何か変だ。
 国民皆保険の納税義務も世帯主で、家族の扶養が義務とされている。

 世帯主の性別の偏りも気になる。現在、98%超えで男性が世帯主である。また、結婚後の姓でも96%の夫婦は夫の姓を選び、夫婦同姓制度の負担は圧倒的に女性が被っている。

 申請書の郵送は、行政サービスを世帯主宛とすることでコストが抑えられる面もあるだろう。しかし、それが世帯主の地位を下支えし、「戸主=男性」という社会的表象を補強しているのではなかろうか。

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