9私の勉強法1 基本の重視

『鉄則1 基本の重視』
■基本を重視する。 「基本なくして応用なし。」

 自分が司法試験に合格し採点をする側になってみて感じることは、勉強しているのに合格しない人は、基本事項をおろそかにしている人が多いということです。
 一通りのことを書いている感はあっても、実際は理解していないことが答案から伝わってきます。

 司法試験に限らず、論述型の試験を受ける方は、基本的な事項を徹底的に理解し、自分の身体に染み込ませ、概念として使いこなせるようになっていなくてはいけません。そうでなければプロにはなれません。

改めて書くことでもないですが、この理由は、
1 基本問題で間違えるようでは、応用問題を解けるわけがない。
2 基本問題を解くのに時間をかけていたら、応用問題に時間を使えない。
3 基本問題は、事前に準備できる。
4 基本問題に配点が集中しており、基本を確実に解くだけで、合格水準を超える試験もある。
5 基本問題のミスは、採点する側も自信をもって減点できる。
ということが挙げられます。

【基本問題を瞬殺すること。】
 これが試験で点数をとるための鉄則です。

 試験場で、簡単に解けそうな問題を見抜き、短時間に回答し、解けない問題を後回しや捨て問として飛ばし、余った残りの時間を時間を掛ければ解ける問題に投下するのです。

「日常の勉強は、基本問題を瞬殺するための鍛錬である」と言っても過言ではありません。
 基本問題を短時間で確実に解けるようにすることが勉強です。他の受験生のほとんどが解ける程度の問題で、ポロポロと取りこぼすようでは、合格なんて有り得ません。

 基本問題を短時間で終わらせる。こうすることで、応用問題を時間的余裕を持って取り組むことができます。そのため応用問題でも得点できる可能性が高まるという意味があります。

 また、応用問題は、どうしても現場思考、ある種のヒラメキを求められる場合があるため、確実に点数を取ることは難しくなります。仮に応用問題を取りこぼしても、基本問題で確実に得点できていれば、その科目は致命傷にはならない(他の科目での挽回があり得る)という意味があります。

 そんなこと当たり前だと思われるでしょうが、実際には全く当たり前ではありません。
過去の私を含めた多くの受験生が、
①   基本事項で点数を取りこぼしているので、応用問題を解けていても点数が意外と伸びない。
②   基本事項に時間を使いすぎてしまい、応用問題を解く時間的な余裕を失っている。
というジレンマに陥っていると思います。

 採点をする側を経験するとわかりますが、基本事項で凡ミスをしている学生は多いですし、前にも書きましたが論述試験では採点するとき基本のミスは減点しやすく、応用部分がそれなりな内容でも、本質が理解できてないことが露見します。

 逆に、基本事項が、安定している論文は、しっかり勉強してます!ということが伝わる骨太な答案の印象を受けます。応用部分がイマイチでも、知らないなりに一生懸命考えて書いてあるねという印象になります。

①の基本問題で失点しているパターンは、ケアレスミスが多いパターンで、受験生自身の手応えとしては悪く無いのに、成績が伸び悩みます。
 失点の多くがケアレスミスになりがちなので、ミスを軽視しがちですが、実はそれが致命傷になっていたりします。

②基本問題で時間を使いすぎパターン(基本問題の瞬殺に失敗しているパターン)はある意味深刻です。
 基本問題を正解し点を取れているので、自分は応用問題が苦手なのだと考えてしまいます。ある程度勉強をしている受験生にありがちなパターンだと思います。しかし、実は応用問題を余裕を持って解ける時間を余らせて基本問題を解き終わらなかったことがミスなのです。
 日頃の学習の際、「問題を解くペース」まで意識が回っていることはあまりないので、別に基本問題を解くことに時間をかけすぎたので、この問題を解けなかったとは考えません。

 このタイプの試験後の手応えとしては、「わかるところはしっかりできたが、最後の部分が難しくてできなかった」というものになりがちで、応用問題こそ自分の課題だと思ってしまいます。
 こうなると色々な応用問題に手を出してしまいますが、これがある意味、ベテラン受験生のはまる罠です。

応用問題は、基本事項比べて範囲も広く、難易度も高く、そもそもすべての応用問題を準備をすることは不可能です。どんなに学習範囲をふやし、学習時間を増やしても、中々目に見えて成績に反映しません。
 本人は、応用問題が解けなかったので点が取れなかったと思っていますが、基本問題に対する時間配分やペース配分を変えることで、成績を上げようとは気が付きにくいのです。

 試験という、限られた時間の中で点を取る競技に参加をしているのだという基本認識ができていないのです。陸上競技で言えば、短距離走で、長距離走の走り方をすれば負けるのと同じようなものです。

基本問題を解くのが遅かったり、基本問題で間違えてしまっていることを重く受け止めなくてはいけません。この基本重視は当たり前すぎるほど当たり前ですが、本当に大事なことです。



 少し自分の体験を話すと(いつか別に体験記をまとめようと思います。)、合格した前年の司法試験で論文で1点差で不合格となりました。択一試験は100位台で今年こそという気持ちで臨んだ論文試験でした。
 しかし、論文は惨憺たる結果でした。
 全く手応えはなく、わからない問題だらけ、この一年の努力は無意味だったと試験中から思っていました。試験会場の早稲田大学から泣きそうになりながら帰ったのは忘れられません。試験後、うつ状態になり、しばらく何も出来ませんでした。

 暫くして成績表が届きました。6科目中4科目がA、合格まで1点不足という結果でした。自分が惨澹たる内容と思っていた科目はいずれもAで、一科目だけ大きく基本事項を間違ってしまった科目がFでした。
 結果的には、自分が難しい問題は他の受験生も難しかったわけで、基本事項さえ間違えなければ、その年にも合格だったのだと思えました。
 この時の成績が悪かったら、司法試験を辞めた可能性もありましたが、1点差で何とか立ち直れました。

 そして、翌年の論文を受けました(択一にドラマがありましたが、それはまた別の話)。このとき私は、「標準的な論文で全て揃えること」を目標にしていました。

 実際、事前の目標どおり、特別なことは何もかかず、基本に忠実に、受験生用語でいう「守りの答案」(失点を防ぐ答案)を揃えました。
 自分の手応えとしては、自分の論文は現役大学生でも書ける程度だなという感想で、悪くもないが、特別良くもないというものでした。
 その結果が12番で合格という結果だったことに正直驚きましたが、当時最難関だった国家試験でもその程度で上位で合格可能なのだということは知って欲しいと思います。

 こんな経験をしたので、勉強法として基本を徹底することを勧めています。

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