16私の勉強法3-1 試験時間の使い方

 試験は、限られた試験時間の中で優劣を競うことが前提となるものです。
 したがって、試験のための勉強では、限られた試験時間を最も有効に使う、最も得点を獲得する方法を意識して勉強する必要があります。

 そのため、
・事前に準備できることは準備して試験に臨む。
・試験場では考えない。試験場は日々の学習で考え覚えてきたことをアウトプットする場所である。
・日頃の勉強の中で、理解できないことは悩み考えておく。
という姿勢が必要です。


 演習中心の勉強をする場合、問題を解いて、解説をみて、理解できないことは飛ばして先に進んで構わないのですが、最後までよく分からない、解けないまま残ったものについて、出題されたらどうするか、どう答えるか、捨て問にするか、大雑把にでも決断しておく必要はあります。

 それをしないで、事前学習でわからないまま考えることもせず、飛ばしっぱなしにして、出題されて初めて試験中に考えるのでは、本末転倒です。試験時間を無駄にしてしまいます。

 演習中心主義の学習の目的は、苦手のあぶり出しにありますので、当然炙り出された苦手事項は克服するか、戦わず逃げるか、対策を用意する必要があります。
 そうすることで、試験中に無用な時間のロスを防ぐのです。試験中に散々考えてやっぱり解けなかったでは悪手です。

 なお、くどいように言いますが、「基本問題を瞬殺する」ことで、時間を作り、現場思考でしか対応できない問題に、他の受験生より時間を割ける状況を作ることで、比較有利になることが、この勉強法の肝ですし、それで難関試験も合格できます。
 何度でも言いますが、全ての問題を解けるようになる必要はなく、他の人でも解ける問題を他の人より速く解くのです。
 難しいように思うかもしれませんが、学習範囲を基本問題に限定し反復演習することが、それを可能にするのです。

◾️ 時間が足りなくて解き終わらないのは問題ない
 模試や過去問の演習で、解き方は分かるけど時間が足りなくて終わらない、と言うパターンはあまり大きな問題はありません。反復学習で経験を積めば回答時間は短くできます。

 どちらかといえば時間内に回答は終わるけど、大きく間違う問が出てしまう方が問題があると思います。
 学生の答案でも、全く求めていることと違うことを回答してあるものに出会うことがあります。採点する時、点数のつけようがなく困ります。本番でも0点になり、その問だけで一年を棒に振る可能性があります。

 少なくともスタートから、どっちに向かうか間違うようであれば、解けるはずがありません。学習不足が否めませんが、わからない問題では往々にしてあり得ることです。特に、勉強を始めたばかりだとよくあることだと思います。

 まず、こういう段階では、速く解くという試験時間の意識は後回しにしてでも、ゆっくりでもいいから一旦は解答の方向性が理解できるようにした方がいいでしょう。
 特に基本事項だけは丁寧に学びましょう。土台が安定しないと高い建物は建ちません。演習中心主義の学習は自然と頻出事項を繰り返すので、この点でも有用です。

 基本事項のインプットできてから、アウトプットのスピード意識の順番で対策は考えるべきです。日々の勉強で、速さだけを追い求めるのは順番が違います。基本問題をしっかり解ける→瞬殺への順番です。
 なお、始めから解き終わらない前提の、事務処理能力を問うような試験などは別の訓練が必要です。


◾️  その問題を解けるイメージがあるか

 試験問題を解けるというのは、
 ①問題を見る。→ ②回答までの道筋が頭にイメージできる。→③回答を作成する(作業)というプロセスです。

 回答への道筋が浮かばなければ、回答などできません。
 問題を見た時に、「ああ、あれね」と解答の流れが浮かぶのなら、後は作業です。

 自分の勉強法は、試験中、基本問題では「①見る→②イメージ」の時間を短縮し(思考時間を無くす。「ああ、あれね」状態にしておく。)、③作業に徹します。
 これに対し、応用問題では、①→②の道筋探しに他の受験生よりも時間をかけようというものです。


◾️  現場思考はゼロベースではない

 このイメージの湧かない、わからない問題を「現場思考で解く」というのは、頭にある「基本事項の回答パターン」から、転用可能なパターンを探す作業に時間を使っているという意味であり、ゼロから何かを産んでいるのではありません。そんなことができれば学習不要です。

 この辺は弁護士になった後の法律相談等でも同じです。
 完全に知ってるような法律相談を受けるときには、その場で知識に基づいて簡単に答えを回答できます。法律相談が数分で終わってしまうこともあります。
 もっとも、法律相談中には初見の問題を聞かれることも珍しくありません。
 そういう時に、(もちろん、調べて改めて回答するというのが正しい態度ですが、)暫定的な答えとして、これまで学んできた法律の知識(基本知識)の中から転用できる考えを探し、おそらくその場合はこう解決されることになると推論で回答しています。

 そういう時、現場で0から新たな解釈を産んでるのではなく、過去に経験してきた紛争の解決事例や判例の記憶から、応用可能なものを相談時間内に「うーん」とか言いながら探し出し、アレンジして答えているのです。

◾️  徹底的に覚えた基本知識だから応用できる

 ストックされている記憶は多ければ多いほど良いのですが、曖昧な情報、適当な記憶がたくさんあってもほとんど無意味です。
 それでは「ネットの知恵袋」状態であり、ただの当てずっぽうな回答になってしまいます。実際、難問に当たった受験生は、昔の自分も含め、知ってることを当てずっぽうに列挙した回答をしがちだと思います。気持ちはわかりますが無意味です。

 しかし、自信を持って応用できる基礎知識があると、その記憶によって、初見の紛争の解答に方向性を与えることができるのです。
 だからこそ基本事項は徹底的に学び、自分で使いこなせるようにならないといけないのです。

3-2に続く。

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