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『映画カンショウ』 気まぐれ散文①

点滅するライトが私を突き刺す。何度も何度も、穴だらけになってしまえとあざ笑う。
まるで針のむしろだ。

画面の向こうで男女が蠢く。愛の囁きから口づけに至るまでの流れにはときめくどころか既視感しかなく、いったいぜんたい人類は、どうしてこうもテンプレートが好きなんだろう?
こりゃあもう遺伝子にインプットされているに違いない、と私は映画館の暗闇でひとり思う。
胎内よりも無機質で、スクリーンに明るい夢と美しい愛を探す空間。
床に散らばるポップコーンのかすは、欲望の残滓のようだ。
私はここで呼吸を繰り返しながら、ぼんやりとレイトショーの行方を眺めている。
ああ、ちょっとした気紛れで立ち寄ってみたけれど、やっぱりラブストーリーは性に合わないらしい。さようなら、私の1300円。こんばんは、先に立たない後悔。

いったん結ばれた男女には、破局の危機が待ち構えているに違いない。
はてさて、ここから二転三転、いや何転して、ハッピーエンドに行きつくのだろうか。
それとも観客の期待を裏切って、2人は別々の未来を歩む?お互いに、正当防衛を気取った理由を携えて。

現実味のない、ふわふわとしておきれいな結末なんて、大嫌いだ。
けれど、「いろいろな人生があるよね」とわかった風に微笑まれるのは、もっと嫌い。

愛だの恋だの、すかしていないで。みんなみんな、衝動をぶちまけて欲望に従って激情に我を忘れりゃあいいのさ。
明日世界が滅亡していますように、と願うように、私はずたぼろの愛をどこかで望んでいる。
誰にも語れないような汚い感情が、今も私の心に澱んでいるから。


(8/20)ありがたい感想をいただき、タイトルつけてみました。
映画「鑑賞」に過去への「干渉」と「感傷」を込めて。


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