見出し画像

【ポケカ考察】『ポケカ哲学の数学的諸原理』


はじめに

 ポケカでは、デッキ構築をしている場面や対戦をしている場面で、様々な選択を強いられます。このとき、最善な選択を考える手助けとなるのが確率です。本記事を通して、結果論で語るのではなく、最も勝利に繋がる可能性が高い道筋を追えるようになりましょう。

数学

 この項目は知っている人であれば飛ばして問題ないです。

二項係数

 コンビネーションの公式は、本記事でこれでもかと言うほど登場します。これだけは最低限理解しておきましょう。異なるn個の中からr個を取り出す組み合わせの数をnCrと書き、nCrは次のようにして求めることができます。数式内の”!”は階乗を表す記号です。

$$
nCr=\frac{n!}{r!(n-r)!}
$$

 上の公式を使って、山札からあるカードをドローできる確率を計算したいときは、全事象からあるカードをドローできない確率を引くことによって求めます。このとき、あるカードの採用枚数をk枚、ドローする枚数をr枚とすると、以下のようになります。

$$
1-\frac{n-kCr}{nCr}\\
=1-\frac{(n-k)(n-k-1)···(n-k-r+1)}{n(n-1)···(n-r+1)}
$$

 これはよく使うので覚えておきましょう。この値を大きくする工夫として、分母を小さくする手段が山札の圧縮に、分子を大きくする手段が採用数とドロー枚数を増やすことに対応します。

二項分布

 統計学は確率と密接に結び付いた分野となっていて、今回は専ら◯%で起こる事象を評価するために統計を使います。ある事象が起こる確率をp、試行回数をn回としたとき、その確率分布は二項分布(ベルヌーイ分布)となり、Bin(n,p)と表記します。ある事象が起こる回数をx回とすると、この二項分布からは、ある事象がn回の試行でx回起こる確率を知ることができます。やり方としては、下のサイトでx,n,pに数値を入力して確率密度の項目を見るだけです。

https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228843

 このグラフを何に使うかというと、大会でn回対戦するときにpの確率で起こるサイド落ちやスタートがx回起こる確率を示しています。ちなみに、計算方法としては反復試行と呼ばれるもので、下の計算式で求められます。

$$
nCx*p^x*(1-p)^{n-x}
$$

デッキ構築

 デッキ構築をする上で、安定性を高めることは非常に大切です。この機会で、サイド落ちやスタートの確率がどのくらいのものなのかを知っておきましょう。

サイド落ち

 あるカードがサイド落ちする確率は、採用数とサイド落ちする枚数で場合分けして考えていく必要があります。

  • Case1. 採用数が1枚

 これは、あるカードを除いた59枚の中からサイド6枚を選ぶ、つまりサイド落ちしない確率を全事象から引くことで求めます。

$$
1-\frac {59C6}{60C6}=\frac{1}{10}=0.1
$$

 よって、10%。

  • Case2. 採用数が2枚

 まず、1枚だけサイド落ちする確率を求めます。これは、あるカードの中から1枚、それ以外の58枚の中から5枚サイドに置くカードを選ぶ確率で、下の式となります。

$$
\frac{2C1*58C5}{60C6}=\frac{54}{295}=0.1830···
$$

 よって、18.3%。

 2枚サイド落ちする確率は、同様に、あるカードの中から2枚、それ以外の58枚の中から4枚サイドに置くカードを選ぶ確率です。採用枚数が3枚や4枚のときも考え方は変わらないので、ここからは省略します。

$$
\frac{2C2*58C4}{60C6}=\frac{1}{118}=0.0084···
$$

 よって、0.8%。

  • Case3. 採用数が3枚

 1枚サイド落ちする確率

$$
\frac{3C1*57C5}{60C6}=\frac{4293}{17110}=0.2509···
$$

 よって、25.1%。

 2枚サイド落ちする確率

$$
\frac{3C2*57C4}{60C6}=\frac{81}{3422}=0.0236···
$$

 よって、2.4%。

 3枚サイド落ちする確率

$$
\frac{3C3*57C3}{60C6}=\frac{1}{1711}=0.0005···
$$

 よって、0.1%。

  • Case4. 採用数が4枚

 1枚サイド落ちする確率

$$
\frac{4C1*56C5}{60C6}=\frac{49608}{162545}=0.3051···
$$

 よって、30.5%。

 2枚サイド落ちする確率

$$
\frac{4C2*56C4}{60C6}=\frac{1431}{32509}=0.0440···
$$

 よって、4.4%。

 3枚サイド落ちする確率

$$
\frac{4C3*56C3}{60C6}=\frac{72}{32509}=0.0022···
$$

 よって、0.2%。

4枚サイド落ちする確率

$$
\frac{4C4*56C2}{60C6}=\frac{1}{32509}=0.0000···
$$

 よって、0.0%。

  • まとめ

 Case1~4で何が言えるかというと、1枚サイド落ちする確率はそこそこ起こる一方で、2枚以上のサイド落ちは滅多に起こらないということです。4枚採用している場合でも2枚サイド落ちする確率は4.4%であり、これは、上で紹介した二項分布を使うと、シティリーグ6回戦の間で一度も起こらない確率が76.3%となります。逆に、4枚採用のカードが1枚サイド落ちすることが6回中1回も起こらない確率は11.3%と低いです。

スタート

 どのたねポケモンでスタートするかは、サイド落ちよりは少し複雑な計算となります。それは、マリガンで引き直すことがあり、複数のたねポケモンがいることもあるためです。環境デッキではたねポケモンの数が9〜12枚であることが多く、今回はシマダダイチ選手がシティリーグで使用したリストで計算していきます。

ca8DcY-q3u9Qw-84cYDD

 また、本記事では地道に計算して求めていますが、自分で調べたい確率があるときには、便利なサイトがあるのでここを利用するのがおすすめです。

https://zk-phi.github.io/handanalyze/

いい感じの初手率計算機
  • マリガンする確率

 マリガンは、たねポケモン以外の48枚の中からカードを7枚選ぶ確率となります。

$$
\frac{48C7}{60C7}=\frac{92966}{487635}=0.1906···
$$

 よって、1回以上マリガンする確率は19.1%。マリガンするかどうかは独立した試行であるので、2回以上マリガンする確率は3.6%(=0.191^2)、3回以上マリガンする確率は0.7%(=0.191^3)となります。

  • ネオラントVでスタートする確率

 他にたねポケモンが手札にあるとき、ネオラントVを置くことはないです。そのため、たねポケモン以外のカードの48枚の中から6枚のカードを選ぶ確率となります。これにマリガンしてネオラントVスタートした確率を足していき、この等比数列の和でマリガン回数を無限大に飛ばすと(マリガンしない確率の逆数を掛けると)

$$
\frac{48C6}{60C7}=\frac{46483}{1462905}=0.0317··· \\
0.032+0.191*0.032+(0.0191)^2*0.032+···=\frac{32}{809}=0.0395···
$$

 よって、4.0%。ネオラントVスタートなんて起こらないと言えるほど確率が低いわけではありませんが、ネオラントVがいることによって勝ちを拾える確率が上回ることから、採用していると考えられるでしょう。

  • ヒトカゲでスタートする確率

 これは、ヒトカゲが手札に1〜4枚ある確率をそれぞれ求め、その和に先ほどと同じくマリガンしない確率の逆数を掛けます。

$$
\frac{4C1*56C6}{60C7}=\frac{163982}{487635}=0.3362···\\
\frac{4C2*56C5}{60C7}=\frac{28938}{487635}=0.0593···\\
\frac{4C3*56C4}{60C7}=\frac{371}{97527}=0.0038···\\
\frac{4C4*56C3}{60C7}=\frac{7}{97527}=0.0000···\\
\sum_{k=1}^{4}\frac{4Ck*56C7-k}{60C7}=0.399\\
0.399+0.191*0.399+(0.191)^2*0.399+···=\frac{399}{809}=0.4932
$$

 よって、49.3%でヒトカゲスタートできるということになります。意外と高いと感じた人もいるのではないでしょうか。

  • 1ターン目になかよしポフィンを使える確率

 先攻のときは、最初の7枚と番始めのドローを含めた8枚の中になかよしポフィンがある確率を考えます。

$$
1-\frac{56C8}{60C8}=\frac{43382}{97527}=0.4448···
$$

 よって、44.4%となります。

 後攻のときは、最初の7枚と番始めのドローを含めた8枚の中になかよしポフィンかペパーがある場合、この8枚の中にナンジャモがあって使う場合に分けて考えます。

$$
1-\frac{53C8}{60C8}=\frac{6310559}{9655173}=0.6535···\\
(1-\frac{56C8}{60C8})*(1-\frac{48C6}{52C6})=\frac{43382}{97527}*\frac{21508}{54145}=0.1766···\\
0.654+0.177=0.831
$$

 よって、83.1%でなかよしポフィンに触れるということになります。ここから、サポートが使えるか否かというのは非常に大きいということが分かります。

(*)正確に求めるのであれば、マリガンやサイド落ちの影響がありますし、最初の8枚の中になかよしポフィンがある場合、なかよしポフィンが手札になくペパーがある場合、なかよしポフィンとペパーがなくナンジャモがある場合、ネオラントVを使う場合、森の封印石を使う場合、しゅんそくを使う場合、すあなにかくすを使う場合に分ける必要があります。しかし、こんな場合分けは誰もしたくないと思いますし、おおよその確率を求めて目安程度に考えるのがちょうどいいです。何でもかんでも計算するだけでなく、実際に回してみてどのくらいの確率でアクセスできるのかの感覚を養うことも大事となります。

プレイの順番

 試合中、カードを使う順番はとても重要です。わずかな確率しか変動しないこともありますが、こういった小さな積み重ねが勝率の上昇に繋がります。

山札の圧縮

 ポケカをプレイしていると、”山札を圧縮する”というフレーズを度々耳にすると思います。この”山札を圧縮する”とは、山札から不要なカードを抜き、ドローによって必要なカードが引ける確率を高めることを指します。これは、ポケカにおいて基本となっている動きです。
 山札の圧縮がこうも叫ばれているのには、理由もあります。それは、ポケカでは手札干渉を頻繁にされるためです。ポケカでは、サイドを先行された側の逆転手段として、ナンジャモやツツジが用意されています。試合の終盤にナンジャモやツツジをされても乗り越えられるように、手札と山札から当たりとなるカード以外はどんどん減らしていきましょう。

ドローとサーチの順番

 ドローとサーチの順番を考えるにあたっては、サーチを2種類に分けて考える必要があります。それは、ドローで引きたいカードをサーチするか、それともドローで引きたくないカードをサーチするかというものです。このとき、ドローで引きたいカード、すなわち、当たりのカードが山札の中に多い状態でドローするのが理想となります。そのため、不要なカードをサーチしてからドローし、ドローの結果を見てから当たりカードのサーチを検討するのが正しいプレイングだと言えます。

ドロー同士の順番

 かくしふだとポケストップや、はなえらびとアクロマの実験の順番で、どちらのドローを先にするのが最適かを考察します。このとき、先行するドローによって山札を圧縮できる可能性もあることにはありますが、その圧縮の期待値は微々たるものであることが多いです。山札の圧縮をしないことにはドローの結果は変わらないので、山札の圧縮が期待できないときはドローの順番の基準が分かりにくくなっています。
 このようなときのプレイングは、裏目から考えていくのがいいです。かくしふだとポケストップのときは、ポケストップで重要なパーツが落ちるのが嫌であればかくしふだから使い、エネルギーの枚数が足りていないのであればポケストップから使います。はなえらびとアクロマの実験のときには、どちらも使うこと自体は確定しているので、より多くの情報を元に大局的な判断によってロストするカードを選択できるアクロマの実験から使います。こうすることで、はなえらびでその番欲しいだけのカードのために重要なカードをロストすることを避けることができます。
 かくしふだとポケストップについては、こっちの記事でもっと細かく書いてあるので良かったらどうぞ。

不確定要素が絡む順番

 コイントスの結果は、イカサマでもしていない限り、誰も予知することはできません。コイントスの結果に左右されないプレイをするためには、コイントスの結果を見てから次のプレイを考えられるようにするのが自然です。そのため、テーブルシティやキャプチャーアロマを使うときは、他のボール類よりも先に使うのが無難です。
 また、今のカードプールの不確定サーチには、コイントスの他に、ポケギア3.0、スーパーボール、ヒスイのヘビィボールもあります。ヒスイのヘビィボールに関しては、手札を減らすデメリットがないときやエリカの招待をケアするとき以外は使わない理由がなく、山札を見てサイド落ちの状況を把握できているときは確定サーチになるので別枠です。問題となる、ポケギア3.0やスーパーボールの効用を測るには、ドローと同じ考え方をします。つまり、”山札の上から7枚ドローしたときに欲しいカードが引けるか”と解釈して考えます。あとはドローとサーチの一般的な話とほとんど同じです。ただし、ポケギア3.0やスーパーボールは、自分が今まで使ったカードやナンジャモといったカードによる山札の変化でヒット率が変動し、回数を重ねる毎にヒット率が下がるということには注意しましょう。あるポケモンをサーチする確率で、スーパーボールがキャプチャーアロマを上回るのは非常に限定的な状況だけであり、キャプチャーアロマの枠を削ってスーパーボールを採用していると恥をかくことになります。

相手からの視点

 プレイする順番は、自分の視点では全く結果に関係なくても、相手の視点からだと見え方が変わることがあります。例えば、手札にペパーが2枚だけあるとき、ペパーを使ってふしぎなあめとまけんきハチマキを持ってきてからマッハサーチで悪リザードンexを持ってきて進化させるのと、マッハサーチで悪リザードンexを持ってきてからペパーでふしぎなあめとまけんきハチマキを持ってきて進化させるのでは、全く意味合いが違います。それは、マッハサーチを先に使うことで、こちらの元々の手札を相手に悟らせないようにすることができるからです。この場合、相手の視点で考えると、マッハサーチでペパーを持ってきた可能性を匂わせることができ、こちらの手札にサポートがないかのように思わせてナンジャモを回避できることがあります。これ以外にも、テツノツツミのハイパーブロアーや崩れたスタジアムといった相手に選択権があるカードを使うときには、相手に他の情報を与えるより先に使うのが重要です。テツノカイナexにエネルギーを全て貼ってからハイパーブロアーを使っても、ごっつあんプリファイをしてくることが相手視点で見え見えで回避されかねません。ポケモンの進化や、エネルギーの加速、ボスの指令といった盤面の変化をターンの最後に回すことは、相手にはなえらびやかくしふだで引いたカードやマッハサーチでサーチしたカードを教えないだけでなく、相手の思考時間を奪うという役割もあります。このように、確定した行動は、後に回すのが基本です。

おわりに

 本記事で書いているような内容は、具体的な計算方法や数値までは覚えていないにしても、上級者であれば誰もが直観的に理解しているテクニックとなります。頭を使うことで、ワンステップ上のプレイヤーを目指しましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?