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夏の庭-The Friends

「好きな本は何ですか」と訊かれたら一番最初に思い浮かぶ本がある。

それが『夏の庭-The Friends』だ。

小学6年生の男の子3人の物語。

その中の1人が祖母のお葬式に参加したことをきっかけに人の死に興味を持ち始める。

人の死ぬ瞬間を見てみたい。

そんな好奇心を持ち始め、3人はもう少しで死んでしまいそうな老人を観察することにする。

ここまで聞くとなかなかひどい話だと思うかもしれない。

しかし、この話はここで終わらない。

老人は途中で自分が観察されていることに気付き、どんどんと元気になっていく。

そこから老人と少年たちの交流が始まる。

心を開き、心を許し始める日々。

少年たちは成長していき、老人は今まで失っていた「生活」を取り戻していく。

その過程も好きなところなのだが、私が一番好きなのはこの本の死の描き方だ。

老人との日々は永遠ではない。

あっさりとその日はやって来る。

初めて読んだ時、こんな描き方があるのかと驚いた。

それまで私が知っている物語の登場人物の死は劇的で感動的でお話の山場と言っていいものだった。

この本は違う。

人の死はとても静かに淡々と描かれている。

だからこそ現実的に感じ、だからこそ心が動く。

私がこの本を初めて読んだのは高校生の時だった。

学校の図書室で友達にすすめられたことがきっかけだった。

それからずっと私の中で大切な一冊になっている。



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