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『花束みたいな恋をした』

「好きな脚本家は誰?」と訊かれたら一番に頭に浮かぶ人がいる。

それが私にとっての坂元裕二さんだ。

ドラマ『Woman』で知り、それから色んな作品を見た。

『わたしたちの教科書』『最高の離婚』『問題のあるレストラン』。

見る作品どれもが面白くて、見るたびに自分にとって大切な作品が増えていった。

そのうちに「脚本 坂元裕二」の作品は必ず見るようになった。

先日、久しぶりに映画館に行った。

『花束みたいな恋をした』を観るためだ。

期待を裏切らないとてもいい作品だった。

ここからはその感想を書きたいと思う。

ネタバレありになるのでご注意を。




菅田将暉さん演じる麦くんと有村架純さん演じる絹ちゃん。

ありふれた男女のありふれた恋物語。

終電を逃したことをきっかけに出会った大学生の2人は好きなものがいっしょで。

本棚なんて自分の家の本棚かと思えるほどいっしょで。

実際にあるバンド名や監督名、作家名を出しながら惹かれあっていく。

この選択の仕方が絶妙で。

「そこが同じだったらそれは意気投合しちゃいますよね」と思わず納得してしまった。

そんな2人は自然と恋をして、付き合い始めて、同棲をし始めて。

楽しくて、だらしなくて、一緒にいるだけで笑える日々。

でも、学生時代の恋愛と社会人になってからの恋愛は同じではいられない。

夢を見ようとすればするほど「現実」が押し寄せてくる。

絹ちゃんといっしょにいたくて社会人になった麦くんがどんどんと変わっていくのが観ていて辛かった。

最後のファミレスシーンがとても印象に残った。

あの頃、終電まで楽しく語り合ったいつもの席に2人はもう座れない。

代わりに自分たちの繰り返しのような男女が座って、自分たちは「結婚しよう」なんて口にしてる。

これって普通はとても幸せなことのはずで。

「結婚しよう」がこんなにも悲しく感じる恋愛物語は中々ないと思う。

結局、2人はお別れしてしまう訳だが、ただのバッドエンドに感じないのがこの物語の不思議なところで。

2人の恋はひとつの思い出として終わっていく。


少女漫画のような派手さはない。

ただ、心にそっと置かれて、じんわりと広がっていく恋だった。

坂元裕二さんの作品を見るといつも驚いてしまう。

どうしたらこんなにも日常を言葉にすることが出来るのだろうと。

日々を過ごしていく中でただ形にできずに消えていく、どうしようもないものや愛しいものをどうしたらこんな風に言葉に出来るんだろうと。

今回も驚くと共に、またひとつ自分にとって大切な作品が増えてしまった。

最後に個人的に思ったことをひとつ。

恋愛物語って普通カップルとかで観に行くものだと思うのだが、このお話はどちらかと言えば一人で噛み締めるものなのではと思う。

むしろラブラブのカップルが観に行くと過去の恋愛や現実を思い出して気まずくなってしまうことがあるかもしれない。

私が観に行った映画館でもラブラブのカップルがいたのだが、観終わった後に「あの人たち、大丈夫かな」と思ってしまった。

余計なお世話だと思うが、最後に付け加えておく。

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