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『人質の朗読会』

小川洋子さんの本を読むといつも驚いてしまう。

どうしたらこんなに綺麗なお話を紡ぐことが出来るのだろうと。

一人一人が語る自分の物語。

それはとてもささやかなもの。

大家のおばあさんと共に並べたアルファベットのビスケット。

お隣の娘さんが自分の家の台所で作ったコンソメスープ。

どこにもありそうでどこにもないエピソードたち。

朗読をしている人たちが人質にされた人々であり、全員が亡くなっているという前提で読むと、それぞれの話がとても尊いものに思えてくる。

人生はからっぽの本棚に本を並べていくようなもの。

誰と出会い、誰と話し、誰と一緒の時間を過ごしたか。

ひとつひとつの物語を死ぬまで本棚に並べていく。

もし、私が最後に選ぶとしたらその中のどの一冊を選ぶだろう。

そんな事を思った本だった。




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