ショートショート「別れと涙とブーメラン」(600字)
こちらの企画に参加します!
お題は「ブーメラン発言道」です。
夏が終わろうとしている。
この高校の部活動では、ほとんどの三年生が夏を以て引退する。
そしてこの部室には、唯一の三年生である俺と、後輩が3人。
「うぅ…先輩ぃ…」
涙もろい二年のヤマザキ。
「しっかりしろよ、次はお前が部長になるんだぞ」
「…はいっ!」
意を決したヤマザキが、そばにあった水の入ったバケツを持ち上げ、勢いよく頭の上でひっくり返す。
「先輩…カゼ引かないでくださいね!」
なんというブーメラン発言。
「いや…お前がな」
室内で水をぶちまけるという、ダイナミックなブーメランスタイル。ブーメラン発言道部、次期部長はやはり、お前しかいない。
ヤマザキは葛根湯を飲みだした。いいから着替えてこい。あと床拭いとけよ。
「先輩…」
ボソッとつぶやく声の主は、一年のコウモト。隣には同じく一年、ササキ。
「お前らも、しっかりヤマザキを支えてやるんだぞ」
「先輩、あの、僕らホントに先輩に感謝してて、最後に一言いいですか?」
「もちろんだ、聞かせてくれよコウモト」
「はいっ!じゃあササキくん、先輩に感謝の言葉、さん、にぃ、いち、どうぞ!」
『イヤイヤ ジブンノ クチデ イエヨ!!』
なんというブーメラン。
ササキが腹話術の人形を持って現れた時から何かあるとは思っていたが。お前こそ自分の口を動かせよ。
だがこれならコウモト、ササキのコンビにも心配は不要だろう。息のあった二人のブーメランスタイルは唯一無二。このダブルスが育つなら、来年の夏はきっと熱くなる。
「お前ら、ブーメラン発言道部をよろしく頼むぞ」
「はいっ」「はい」『ハイッ』
じゃあな、後輩たち。
さらばブーメラン発言道、我が青春よ。
しかしこいつら、なんでこんな変な部活やってんだ…?
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