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持続化補助金をつかう。

ここはパパの友人の家。
出された料理を美味しそうに食べているパパ。友人はどこか浮かない顔だ。

パパ:ミルクソースのハンバーグ初めて食べたけど、いいねこれ。
友人:よかった。初めて人に出したから、どうかなと思って。
パパ:新メニュー的な?
友人:いや、まあ、そのつもりはなかったけど。
パパ:お店で出してもいけると思うよ! 
友人:ありがとう。

挿絵_1

パパ:……どうした?
友人:何が?
パパ:なんか、元気なくないか。
友人:そう見える?
パパ:見える。
友人:実はさ、ヤバいんだよね。お店。
パパ:ああ……そっか。そうだよなあ。今、大変だもんな。
友人:変わらず来てくれるお客さんもいるんだけどさ。
パパ:短縮営業だしなあ。20時までだっけ?
友人:うん。
パパ:うーん、かきいれ時の夜に開けないのはやっぱ痛いよなあ。
友人:従業員も減らして、自力で回してるけど、そろそろ限界。
パパ:お前のハンバーグが食べられなくなるのはさみしいなあ。
友人:そういってくれるのはありがたいけど。
パパ:どうにかして売上戻せないか。そういや、テイクアウト始めたって言ってたけど。
友人:あんまり売り上げ伸びなくて。焼け石に水。
パパ:通販は? 需要あると思うけど。
友人:それも考えてみたけど、真空包装機っていうの? あれ買う余裕すらないから、今。

パパ:持続化補助金は応募した?
友人:なにそれ。
パパ:低感染リスク型ビジネス枠ってやつ。「コロナに対応したビジネスモデルへの転換を支援」って名目で国が出してる。通販を始めるための初期費用ってことなら、それが使えるはずだ。
友人:へえ、そんなのあったんだ。
パパ:4分の3まで出してくれて、上限は100万円。
友人:審査、通るかな?
パパ:採択率はそんなに高くないけど、補助金の目的と合致してれば、きっといける!
友人:応募基準とかクリアしてるの?
パパ:前提としては、法人または個人として事業を行っていること。
友人:そんなの、誰でもOKってことじゃん。
パパ:そうだね。一応もう一つ大きな条件があって、一般的には、雇用保険を適用している従業員が20人以下であること。

(参考)持続化補助金の概要

挿絵_2

友人:あ、余裕でクリアしてるわ。ウケる。
パパ:笑いごとじゃないよ! これでお店が続けられるかもしれないんだぜ。友人:そうだなあ。
パパ:なんでそんなに他人事なんだよ。
友人:いやあ、正直、疲れちゃってさ。
パパ:疲れた?
友人:お店経営するのって、料理作るだけじゃないじゃん。俺、うまい飯作って、ひとに食べてもらえたらそれでよかったんだよね。
パパ:それは分かるよ。けどお前、俺流のハンバーグを日本に広めたいんだって息巻いてたじゃんか。
友人:そう。だから、お店はたたんで、どっかの洋食屋で雇ってもらえないかなって。お前みたいに家庭があるわけでもないし、俺一人ならどうとでもなるしさ。
パパ:いや、だめだ!
友人:ええ?
パパ:お前のハンバーグは、お前のお店だから成り立ってるものだろ。別のお店で作ったら、それはもう別の味なんだよ。俺はお前のハンバーグになくなってほしくない。お前のハンバーグがなくなるのは、国の損失なんだよ!
友人:国の損失ってまた、大きく出たな。
パパ:「飲食は競争が激しい業界だからこそ、生き残ることに意味がある」って店出すとき言ってたじゃんか。
友人:確かにな。ここで諦めたら、お前の二の舞になっちゃうもんな。
パパ:そうだよ! 俺が店閉めたときもさ、お前、俺の分まで頑張るよって約束してくれただろ!
友人:ああ、そんなこともあったな。
パパ:(……まあ俺が店つぶしたのはコロナ関係ないけど……)

友人:うーん。そこまで言われちゃったら、もう少し頑張ってみるかな。
パパ:そう! その意気だよ!
友人:けど俺、書類作んのとか超苦手だぜ。
パパ:書類は俺が手伝うよ。
友人:それはありなの?
パパ:応募要項には「外部のアドバイスを受けること自体は問題ない」ってあるから、あくまでお前が検討している事業計画なら大丈夫だ。
友人:それなら、まあ、応募するだけしてみるか。
パパ:真空パックなら、店内で出す食材にも使えて便利だしな。
友人:いや、それはいいのか? 「新しいビジネスモデル」とやらに関係ない使い方と思うんだが。
パパ:ダメだけど。
友人:ダメじゃん。
パパ:応募要項には確かに「補助対象外経費が含まれた状態で申請されても、当該経費は本補助金の交付対象とならない。」ってある。
友人:ダメじゃん。
パパ:まあ常に監視されるわけじゃないし、真空パックを使って通販ビジネスを始めることは事実だし…ね?
友人:(そういえばこいつ、こういうやつだったな……)

※注意
補助金で買ったものは、原則として補助金の目的外には利用してはいけません。悪質な場合、補助金の返還が必要となるだけでなく、罰金(加算金)や刑事罰の対象となる可能性があります。

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文:エマダ
挿絵:わたせあつみ

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