【あなたに贈る詩】ロックな詩
SNSで「どんな詩が読みたいですか?」と呼びかけたところ、リクエストをたくさんいただいたので少しずつお答えします!
「ロックンロールな詩が読みたい」というリクエストをくださったのは、大分県佐伯市で経営コンサルティングをしている浅利善然(あさり・ぜんねん)さん。ありがとうございます!
んー、ロックンロールですか。
めちゃくちゃ爽やかで、サムライっぽい兄さんのオーダー、ちょっと意外な感じもしますが、いってみましょう。
「俺は40で死ぬ」短い人生を駆け抜けた詩人
ボリス・ヴィアン(1920-1959)という詩人を知っていますか?
作家、作詞家、トランペット奏者、画家、俳優、歌手活動など様々な活動を行った詩人です。
彼は白人なのですが、脱走兵の黒人のふりをして書いた『墓に唾をかけろ』という小説でデビュー。アメリカのハードボイルド小説を翻訳するよう依頼されたヴィアンが「翻訳するぐらいなら俺が書く方が速い!」と書いたそうです。大衆には大人気だったそうですが裁判にかけられて負けました。
なんか、エピソードがロックだ。
ちなみに、いちばん有名作の『うたかたの日々(日々の泡)』は、エキセントリックな恋愛小説なんですよ。繊細でメランコリック。美しいです。
そんなヴィアンですが、「俺は40で死ぬ」と周囲に言っていたとおり、39のときに心臓発作で亡くなりました。映画版『墓に唾をかけろ』の試写会のときだったそうです。心臓が弱かったヴィアンがトランペットを吹くのは危険だったと思うのですが、意に介さずジャズへの憧れのままに吹きまくっていたようです。ロックだ。
そんなヴィアンが書いた詩を紹介しますね。
「ぼくはくたばりたくない(Je voudrait pas crever)」(訳…菅原敏さん)
僕は死にたくない
太陽の冷たさ
月の裏側
夢を見ずに眠る
メキシコの黒い犬
銀色の蜘蛛
熱帯を食べ尽す
お尻まるだしの猿たちを
知らずには
短い人生を知っていたヴィアンだからこそ、こういうジリジリっとした情熱と憧れを描けるんでしょうね。続きです。
僕は死にたくない
僕のくちびるが 君のくちびるに
僕の指先が 君のからだに
僕の声が 君の耳に
僕のまなざしが 残りのすべてに
溶け合うまで
くらやみでさがす ふたりの一冊
埋められぬ過去を埋めるまで
僕はくたばりたくない
▼フランス語の朗読とアニメーション
原題のJe voudrait pas crever(ぼくはくたばりたくない)について、"crever"は「死ぬ」ですが、「破裂する(風船などが)」「くたばる」みたいなニュアンスが強いです。「お腹がすく」というのもcreverをつかうので、「生きる」に直結した動きが超爆発して死んじゃう、みたいな感じ。同じ「死ぬ」でも、「眠る/枯れるような死」のイメージがある"mourir"よりも激しい動きがあることばです。ヴィアンらしいですね。
同じく心臓病に悩まされた詩人にジュール・シュペルヴィエルという人がいて、彼もまた詩のなかに濃厚な「死」の空気をまとっているのですが、まったく作風はちがいます。その話はまた佐伯で飲みながら!
終わりに
いかがでしたでしょうか?善然さんは、さいきんお誕生日を迎えられましたよね。おめでとうございます!
善然さんにはめっちゃ長生きしてほしいんですけど、「●歳で死ぬとしたら?」「まだくたばりたくない!」という熱い想いを自分に課してロックに生きるのもかっこいいですね。
わたしは、実は、享年17のはずだったのに、どっこい生きています。そして、「まだくたばりたくない!」です。まだ見ていない景色がある。
では、では。またゆっくり。
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俳人の高屋窓秋(たかや・そうしゅう)も、「伝統への挑戦」という意味でロックかましています。ヴィアンが「動」のロックだとしたら、窓秋は「静」のロックですね。
佐伯市についてはこちらを。すてきな町です。また行きたいな。
そのお気持ちだけでもほんとうに飛び上がりたいほどうれしいです!サポートいただけましたら、食材費や詩を旅するプロジェクトに使わせていただきたいと思います。どんな詩を読みたいかお知らせいただければ詩をセレクトします☺️