【あなたに贈る詩】自然とのつながりを感じる詩 #cocan体験記
「詩のソムリエ様」
ある日、ふわりと届いたメール。
「今自分にできること」を交換しあうcocanというサイトで、ひっそり「詩のセレクトをします」と書いてあったのを見てご連絡をくださったのです。
見つけてくださって、うれしいな。
後日、zoomで「はじめまして」した、ふにさん。
メールの感じと変わらない、笑顔の優しいすてきな方でした。
全私が泣く体験記を書いてくださいました!!うれしい。
「とても色気のある方」…ありますかね、色気(笑)
でも、ありがとうございます!
まずは今日の気分やふだん気になっていることを軽くおしゃべり。
ヨガやカード・リーディングをしていて「みんながつながっている」という感じや哲学に興味があるとのこと。
そこで、2篇の詩を選びました。
選んだ詩はこちら!
1作品目は、吉野弘「生命は」。
生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
(中略)
花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない
詩集『風が吹くと』1977年
庭の芙蓉の花から詩想をえたこの作品。
おしべの長さがめしべの半分しか無く、自己完結できないようにできているという気づきから生まれたそうです。
最後の2つの連がいいね、とお話。
自分が「いいこと」をしていると思っていなくても、いつのまにか気づかぬままに誰かに影響しているかもしれない。
そんなふうに世界はゆるやかに構成されている。
ぽかぽかと春の日ざしを感じるような詩です。
新型コロナウイルスの影響でみんなが個々でとじこもっている中、この詩を読むと目に見えない自然や人とのつながりを感じ、ホッとしますね。
2作品目は、シャルル・ボードレールの「交感 Correspondance」。
(あ、今気づいたけどcocanにかかってる!笑)
交感 シャルル・ボードレール(市川裕見子訳)
自然はひとつの神殿だ。
そこでは生きた柱の数々が
ときおり判然とせぬ言葉を洩らしている。
人は象徴の森を渡ってゆき
森は親しげなまなざしを人に送っている。
はるか遠くから返ってくる木魂が
暗く深くひとつに溶けあうように、
夜の闇のように、昼の光のように広大に、
芳香と色彩と音響とが呼応しあう。
子供の肌のように新鮮で、オーボエのようにやさしく、
平原のように緑なす芳香があると思えば、
― また一方では腐敗した、豊潤で華々しい芳香が漂う。
無限なるものの拡がりをもつこと、
琥珀や麝香、安息香や乳香のごとくだ。
そしてこれら芳香を放つものは、精神と感覚の横溢を謳っているのだ。
「ボードレールというフランスの詩人のこういう詩があるんですけど(ちょっとどうなのかなぁ、わたしもこれよくわからんし)…」と出したら、「あ、これはヨガのめざすべき境地に近いです!」とのお返事。
なるほど〜!
ヨガをやっている人ならではの感性。
Correspondance(万物照応とも訳される)とは、わたしという小宇宙(ミクロコスモス)と、世界という外宇宙(マクロコスモス)が響き合うこと。
いちばん身近な例は星占い。ヨガも通じるところがありますね。
ボードレールが活躍した19世紀は、産業革命によってどんどん合理化効率化していく一方で、Correspondanceのように「非合理」とされる自然観も大事なんとちがう〜?と考える人文学者も出てきました。
そこで生まれたのがこの詩。資本主義が限界に達している現代と、状況はすこし似ているのかもしれませんね。
澁澤龍彦、福永武彦など多くの人が訳していてかなり雰囲気もちがうので、もし気になったら調べてみてください。
吉野弘と、ボードレール。
わたしのなかで全然イメージが重ならない二人でしたが、お話してみて、いろんな発見がある楽しい時間でした!
ありがとうございました。
Cover photo by Thought Catalog from Pexels
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