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【あなたに贈る詩】世界へ心が向かう詩 #cocan

「ちょっとしたできるコト」を交換しあうcocanというサイトで、「詩のセレクト」を出品しています(お金はかかりません)。

▼cocan体験記(ふにさん、ありがとうございます!)

さて、今回お話させていただいたのは、デザイナーのたゆさん。
凛としたきれいさが漂っている方でした!マイナスイオン…。

まずは軽くおしゃべり。去年はコロナもありなかなか思うように動けなかったけど、いろんなものに出逢いたい最近だそうです。丁寧なことばの裏に、ふつふつとしたエネルギーを感じました。そして詩も書きはじめたということなので、世界に心が向かう詩を選びました。あたたかいお飲みものとどうぞ。

世界へ心がひらかれていく詩

まずは長田弘(おさだ・ひろし)さんの詩です。

「世界は一冊の本」長田弘

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

書かれた文字だけが本ではない。
日の光、星の瞬き、鳥の声、
川の音だって、本なのだ。

ブナの林の静けさも
ハナミズキの白い花々も、
おおきな孤独なケヤキの木も、本だ。 

本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。

ウルムチ、メッシナ、トンプクトゥ、
地図のうえの一点でしかない
遙かな国々の遙かな街々も、本だ。

(中略)

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

わりと好まれる詩なのでどこかで聞いたことがあるかも?じっくり改めて読むと「いいなぁ」としみじみする詩です。日の光や木々のざわめきが、地名のひとつひとつが語りかけてくるような。音読しても楽しいですね。ウルムチ、メッシナ、トンプクトゥ。

詩の続きでは、記憶をなくした老人の表情、草原、風、ガゼルやヌー…それらも「本」だといいます。詩のことばに導かれ、世界へ心がふわ〜っと向かう詩。(著作権の関係で全文掲載できないので本を読んでみてくださいね)

新型コロナウイルスの猛威がつづき、思うように世界への扉が開かないと思う人も多いかもしれませんが、この詩を読むと、身の回りのものすべてに「世界」のエッセンスは広がっているのだと気づかされます。たゆさんの一年もまた、自身の詩のことばを得て、世界の見え方が変わっていくのかもしれないですね。

自分を鼓舞する詩

もう一篇は、明治〜大正にかけて活躍した山村暮鳥(やまむら・ぼちょう)の詩です。

「断章4」山村暮鳥(『梢の巣にて』1921 所収)

おまへは世の中へでてもつと世間をみて来なければならない 
世の中でおまへのしなければならない仕事は沢山ある 
小鳥を森へかへすのだ 

最初の二行はちょっと説教臭く見えますが、「小鳥を森へかへすのだ」という詩的イメージの、なんと美しいことでしょう。

わたしはこの詩がずーっと好きで、仕事をするときも「小鳥を森へかえす」イメージをもっています。胸のうちにいる小鳥(想い、やるべきこと、使命感)を自分の手で森(より大きな社会の、届けるべき人)へ届けていく、という感じでしょうか。

キリスト教伝道師でもあった暮鳥の胸のうちに燃える無垢な使命感が、美しい詩語となっていると思います。

これは、暮鳥の命を奪うことになる結核がどんどん悪化する時期に書かれた詩です。命をかけていた伝道師を辞めざるをえないほどでしたから、「おまへ」はほかでもない自分自身に言い聞かせて鼓舞している詩なのでしょう(時代的にも、恐慌、大正デモクラシーと大きく渦巻く頃でした)。

お話するなかで「がんばる気持ちを鼓舞されたい」というリクエストもあったので、この詩を選んでみました。二篇じっくり味わっていただけるとうれしいです。

最後に

いかがでしたか?詩を書きはじめたたゆさんが、どんな言葉をつむいでいくのか、とても楽しみにしております!わたし自身は学校という存在に常に反抗するパンキッシュな子供だったので「世界は一冊の本」は「教科書的だ」というアレルギーをもっていたのですが…今あらためて読むといい詩だな〜、と思いました。こういうご時勢だから余計に響きます。詩との出逢い直しもいいですね。

では、またどこかで。





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