今週の詩(霜降)|あたたかい手
こんにちは、詩のソムリエです。急に寒くなりましたね!今週のはじまりは、七十二候「霜始めて降る」。
さいきん急に寒くなりました。人肌恋しい季節、にぴったりのみじかい詩をひとつどうぞ。
あなたの手は
握りしめるとあたたくなる手だ
あなたの手は
あたためるとひよこが生まれる手だ
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なんとも、あったかみのある、それでいてしんと静かな作品。
この詩を作った矢沢宰(やざわ・おさむ)は 昭和41年(1966年)に21歳で亡くなりました。
小学校2年生で腎結核を発病し、病院での入院生活が続き、短い人生を閉じました。『光る砂漠』という詩集があります。
繊細な感性を、透徹な目で見つめた詩たち。
八木重吉と似ている雰囲気があるのは、おなじく病気と孤独のなかで自分の清らかさや表現を守り続けてきたところにあるのかもしれません。
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この詩を読むと、わたしが高3で入院したときのことを思い出します。
朦朧とした意識の中、校長先生がそのあたたかい手でわたしの手を握ってくれたこと。よくしゃべる先生がそのときだけ何も言わなかったけど、じゅうぶんすぎた。あの手のふかふかとした暖かさは、わたしを安堵させるのに、じゅうぶんだった。
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あなたの手があたたかい。
生きてる。
そんな素晴らしさを、すばらしいという言葉なしに表現し切った矢沢宰の詩。
コロナ禍で手を触れることもむずかしくなったこの約2年。いま読み直したい作品です。
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きっと今日もすてきな一日になりますよ!体調に気をつけて過ごしましょう。
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