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絵本『ゴルトベルク変奏曲 バッハ 音のよろこび』

J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」にまつわる逸話を、絵本に仕立てたものです。

1737年のはだ寒い秋の朝だった。ポーランドのグダニスクに滞在中だったカイザーリンク伯爵は、セント・メアリー教会の木の長イスにすわった。

今では音楽の父と呼ばれるバッハが、カイザーリンク伯爵を教会に呼んだのです。

二階のオルガン席には、十歳くらいの男の子が座っています。

頭上のパイプ・オルガンから神々しい音楽がふりそそいできた。

バッハは、その男の子、ゴルトベルク少年に練習をさせたいといいました。カイザーリンク伯爵は面倒をみようと言い、バッハがレッスンを授けることになります。

ゴルトベルクはドイツのドレスデンにある伯爵のおやしきで、下働きをしながら、音楽の練習をしました。バッハが親切なので、

ゴルトベルクはりっぱな音楽家になろうと、心にちかった。

数年して、カイザーリンク伯爵は、不眠症になり、夜中にチェンバロ(ハープシコード)を練習するゴルトベルクの音楽を聴きたがりました。そして、

「あらゆる工夫がこらされた曲をたのむ」

と注文しました。

「わしがどんな曲を聞きたいか、わかるかね? ダンス曲や、装飾音符のいっぱいついた難しいパッセージ、それに、カノンも必要だな」

そんな曲は作れず、ゴルトベルクはバッハに相談しました。すると、バッハが変奏曲を弾いて楽譜を貸してくれました。

ゴルトベルクは、朝から晩まで練習しました。

ヨハン・セバスチャン・バッハのあらゆる工夫のある曲……
「すばらしい!」伯爵は、大声をあげた。「かんぺきだよ!」

こうして、カイザーリンク伯爵は、ねむれない夜にはゴルトベルクにバッハのあの変奏曲を演奏させました。

これが「ゴルトベルク変奏曲」と呼ばれるようになった音楽です。

訳者からひとこと
本書は、かぎりなく史実に近い創作物語といえます。

『ゴルトベルク変奏曲 バッハ 音のよろこび』アンナ・H・セレンザ文 ジョーアン・E・キッチェル絵 藤原千鶴子訳 評論社 2010

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