いつもと同じ いつもと違う
いつもと同じ時間 いつもと同じ電車に乗る
私にとってはいつもと同じことなのに
毎回乗り合わせている人が違うってことは
他の人はいつもと同じことを繰り返していないのか?
寝不足でうっすら頭痛がする。ぼんやりした頭のなかで
こんなことを思いながら車窓からの風景を見ていた。
そのうち眠ってしまった。遠くで、次はxx駅~という
アナウンスが聞こえていたはずなのに、ずいぶん長いこと
眠ってしまっていた。
さわやかに目を覚ますと、混み合っていた車内は
数人の乗客が座っているだけになっていた。
乗り過ごした・・・ あせりはない、もう今日は仕事を休もう。
こわばったこりをほぐそうと首を回したとき、
斜め前にすわる男性が目に入った。一瞬、なにかいけないものを
見てしまったと思った。回していた首をとめて、さりげなく見てみると
その男性の首にはふっくらした胸があった。胸とわかったのは
乳首があったから。
いったん目を閉じてからもう一度見た。
やはりあれは胸だ。こんなことがあるのだろうか。
胸が見えているのに隠さないでいるなんてことはないだろう。
襟をたてたり、ハイネックのシャツを着れば隠れるのだから。
もう一度見た。今度は気づかれないようにしながらも観察した。
間違いない。あれは胸だ。男性の顔を見た。恥ずかしがるでも
おびえるでもない、普通の表情。自分のことを、かわいそう、かわっている、と思っている様子もない。彼にとっては普通の姿。あたりまえの姿。
私だけが動揺していた。驚き、恐れ、違和感、哀れみ。かわいそう。
彼の表情はあまりにも普通で、かわいそうと思うことがおかしいのではないかと思えてきた。
いつもと同じ、いつもと違う、私の判断基準はその2択だったのかもしれない。ぼんやり目の隅で、すでに見慣れてきた首の胸を見ながら思った。
さあ、次の駅で降りよう。いつもと同じ生活に戻るために。
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